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バス爆破未遂から2年後の因縁対決。
トゥヘルvs.ドルトムントの結末は。
posted2020/03/11 15:00
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
ドルトムント対パリSG。
今季CLベスト16の組み合わせ抽選を受け、少なくないドイツファンが因縁めいたものを感じたのではないだろうか。
2015年から'17年までドルトムントで監督を務めていたトゥヘルが古巣のスタジアムに戻ってくる。ただ、その帰還は通常のケースとかなり異なる。非常にピリピリした空気が、あの日からずっと流れているからだ。
2017年4月11日。
ドルトムントのチームバス爆破未遂事件が起きた日だ。当時チームには香川真司もいた。世界のサッカーシーンにおいても非常に痛ましい、衝撃的な事件だった。
バス爆破事件でのトゥヘルの反発。
その日、CLベスト8に進出していたドルトムントはフランスのモナコをホームに迎えていた。いつも通りのスケジュールでスタジアムに向かうバス。突如、非日常的な爆発音が響き渡る――。
何が起きたのかわからず、車内はパニックとなる。
当時ドルトムントにいた元スペイン代表のDFマルク・バルトラは手を負傷した。テロ事件がヨーロッパ各地で勃発していた時期だったため、そうした関連の事件かと思われたが、その後の調べでロシア系ドイツ人のセルゲイ・ウェナーゴルトという犯人が、ドルトムントの株価下落を目論んで起こした事件だったということが判明した。
被告は殺人未遂など28件の罪で逮捕されて、すでに禁固14年の有罪判決を受けている。
試合は当然中止、延期の決定が下された。ただし、振替となる試合日を見つけようにもスケジュールにほとんど余裕がない。4月ということはもうシーズン終了まで1カ月強の時期であり、リーグ戦はもちろん、国際カップ戦の日程も動かすことができない。
様々なディスカッションを経て、UEFAは翌日に試合を延期する旨を発表した。ところが、それに当時ドルトムント監督のトゥヘルが猛然と反発した。
これほどの事件のあと、選手たちは気持ちの整理がついていない。そんななかサッカーの試合に集中して取り組むのは不可能だと。
また、そんな大事な情報をショートメールで受けただけだと主張し、興奮を抑えることができないまま、代表取締役ハンス・ヨアヒム・ヴァツケの決断を「人間的ではない」と言い切ってしまった。