欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
バス爆破未遂から2年後の因縁対決。
トゥヘルvs.ドルトムントの結末は。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/03/11 15:00
ドルトムントでもPSGでも抜群の信任とはなっていないトゥヘル監督。今回のCLはまさに彼のキャリアを左右する一戦となる。
クロップとは対照的なエンディング。
一方、クラブ首脳陣はトゥヘルの反応が納得できない。それは、翌日に試合を延期することに関してはトゥヘルも話を受け、了承していたからだという。実際、両者の間でどんなやり取りがあったのかは定かではない。
しかし、それを機に両者の関係はどんどん冷え込んでいった。トゥヘルは同シーズンにドイツカップで優勝し、CLグループリーグ直接出場権も獲得しているが、結局そこが最終地点となった。こんがらがったままの関係での終焉だ。
偉大な人間性を持つ前任者ユルゲン・クロップが、多くの人に惜しまれながらクラブを去ったときと比べて、あまりに対照的なエンディングだった。
それぞれのコメントは乾いている。
当事者は何を思うのだろう。
トゥヘルがドルトムントを去ってから両者の間には一度もコンタクトがなかったという。
今回のCL直接対決を前にした2月14日のブンデスリーガ第22節・フランクフルト戦後、普段はミックスゾーンで快く取材に応じる首脳陣はすべてのインタビューを断っていた。試合前日になってヴァツケが応対したが、あくまで冷静に、そっけない乾いたコメントを残すのみだった。
「(トゥヘルとのことは)別に重要なことではないと思っている。ユルゲン・クロップが帰還してくるわけでもない。2年間ここでともに仕事し、最後は少しいざこざがあったが、それも3年前の話だ。我々の間には何もない。私の方からはないね。人生において親友になることはないだろうが、顔を合わせたら挨拶はするよ。彼もそうしてくれると思う」
一方のトゥヘルは「いろいろなことがあった。ここで監督をするのは夢だったからね。少し不思議な、でもいい感情を持っている。みんな当時のことはそれぞれ整理していると思う。いずれにしても大事なのは私がどうこうではなく、重要な試合が待っているということだ。CLで勝ち残っていくのは大きなチャレンジ。私個人の状況は問題ではない」と、こちらも型通りに答えるだけだった。
トゥヘルがサッカー指導者として優れた手腕を持っていることは、確かだ。次の試合に向けて徹底的に相手チームを分析し、相手の長所を抑えつつ、自分たちの良さを引き出す戦い方を見つけ出す。そこには一切の妥協も雑念もない。