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バス爆破未遂から2年後の因縁対決。
トゥヘルvs.ドルトムントの結末は。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/03/11 15:00
ドルトムントでもPSGでも抜群の信任とはなっていないトゥヘル監督。今回のCLはまさに彼のキャリアを左右する一戦となる。
評価について回る人心掌握能力。
2月12日、フランスカップのベスト8でディジョンに6-1の勝利を収めたが、この試合を欠場したネイマールは翌日のチーム練習参加を拒否。ディジョン戦の前、トゥヘルが「ドルトムント戦に間に合うかどうかは100%確実とは言えない」と発言したことに納得いかなかったと、フランスの『レキップ』紙は指摘している。
間違ったことは言っていない。ただ、その言葉が選手にどのように響くのか。世界トップレベルの指揮官となるためには、そのあたりの微妙なさじ加減も調整して人心を掌握する能力が欠かせない。
そうしたいざこざがあり、ネイマールはドルトムント戦で復帰を果たしたものの本来のフォームとは程遠いパフォーマンスで終わった。
それもあって試合後には「4試合もプレーできなかったのはつらい。残念だけど僕の決断じゃない。クラブとメディカルスタッフが決断しているからね。納得できなかったから何度もディスカッションをした。僕の感触は良かったし、プレーしたかったのに。でもクラブは不安だったんだ。結局僕が最終的には被害者みたいなものだよ」と不満を漏らしていた。
いいチーム作りだけでは物足りない。
1-2で敗れたドルトムント戦後、トゥヘル自身は「あまりに多くのミスをしてしまった。危険な場所で相手にスペースを許してしまった。攻撃は辛抱強さと正確さ、タイミングに欠けていた」と振り返った。
3月11日に予定されている第2戦で、どのような修正を見せるのか。そこは、まさに監督の腕の見せ所だ。このままCLで早期敗退したら、パリ監督としての終焉を意味するとフランスメディアの多くが報じている。
批判の声は強くなってきている。元パリSG監督のルイス・フェルナンデスも、ドイツの通信社に対し「カタールのオーナーがクラブを率いるようになって以降、結果を見れば最悪の監督だ。クロップ、グアルディオラ、アンチェロッティといった監督のレベルには遠く及ばない」と痛烈に攻撃している。
いいチーム作りをしているだけでは物足りない。パリはCL優勝を狙うために多額の投資をしているクラブだ。リーグ優勝だけでは名刺にならない。トゥヘルが世界の名将の仲間入りを果たすためには、ここを乗り越えなければならないのだ。
様々なケースが想定された古巣との第1戦、拍手もブーイングも起きなかった。まるで何もなかったかのように。第2戦でも、過去のいざこざが注目されることはないだろう。それぞれが、それぞれの未来に向けて戦うのみ。答えはすべてピッチにある。