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バス爆破未遂から2年後の因縁対決。
トゥヘルvs.ドルトムントの結末は。 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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photograph byGetty Images

posted2020/03/11 15:00

バス爆破未遂から2年後の因縁対決。トゥヘルvs.ドルトムントの結末は。<Number Web> photograph by Getty Images

ドルトムントでもPSGでも抜群の信任とはなっていないトゥヘル監督。今回のCLはまさに彼のキャリアを左右する一戦となる。

マインツ時代のエピソードとは。

 マインツ監督時代に次のようなエピソードがある。

 いつものようにミーティングを終えたチームは試合会場へバスで移動していた。そこでトゥヘルの隣に座っていたマインツのチームマネージャーのクリスティアン・ハイデルが、ふとミーティングの内容を思い出して冗談っぽく、トゥヘルにこう話しかけたという。

「それにしても大胆なスタメンだな。前節から6人も入れ替えるなんて」

 笑顔のハイデルに対して、トゥヘルは何を言われているのかまったくわからなかったという。トゥヘル自身が、先発を6人入れ替えていたことに気付いていなかったのだ。すぐアシスタントコーチの下へ行き、「俺たちはかなり極端なことをしようとしているのか? スタメンを6人も代えていたと気づいていたか? でもこれはいいスタメンだよな?」と何度も確認を取ったという。

規律の成果と、ネイマールとの確執。

 トゥヘルは目の前の試合にだけ集中している。次の試合に勝つためにはどんなシステム、やり方をすべきで、そのためにはどんな選手が必要なのか。それを見定める。その姿勢はドルトムント時代から変わらず、現在パリでもそうだ。

 チームに厳しい規律を持ち込み、選手のコンディションをしっかりコントロールできるように配慮している。パリ首脳陣はこうしたやり方を評価しているし、フランス代表監督ディディエ・デシャンも「トゥヘルはパリに落ち着きをもたらした。クラブにとっていいことだ」と話していた。

 プレー面にしても、指示でがちがちに選手の動きを固定しようとしているわけではない。「サッカーは相手のあるスポーツ。パターン通りにいかないことばかりなのがサッカーだ」というのは常々口にしていること。だから、トゥヘル本人は選手のことをいろいろ考えて、気持ちよくプレーできるように努めている。

 ただ、そうした姿勢が本当に選手のモチベーションを上げるかと言うと、そうではないことも多い。とりわけトッププレーヤーのプレーを解放させる効果があるかと言われると、少々難しいと思われる。パリでも、ネイマールとの確執が日常的に報道されている。今回のCLドルトムント戦に向けてもそうだった。

【次ページ】 評価について回る人心掌握能力。

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