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祝喜寿アントニオ猪木の伝説検証!(4)
数々の名勝負とこれからの夢。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2020/02/29 19:00
勝つためにはすべてを使う! チョチョシビリ戦で、相手の道着に噛みついてまで戦っていたアントニオ猪木。
今の夢は、水プラズマを使った新事業!
祖父から引き継いだような大きな夢を、猪木は今も追い続ける。その家系で培われた猪木の世界観は独特だ。
「山師なのかもしれない。悪い意味ではなくてね」(猪木)
そして、今の夢はプロレスではない。
猪木の頭にあるのは「水素」だ。
環境汚染の対策として水プラズマを使った産業廃棄物処理の実現に向けて動いているのだという。九州大学の渡辺隆行教授の理論に則って、フィリピン政府の後押しを受けて事業化を進めているのだそうだ。
こういう時、猪木の掲げるテーマはいつも、とてつもなく大きい。
「世界の食糧危機を救う」「環境問題」「エネルギー」……そして今回は「ゴミ問題」だ。
かつて、ブラジルで進めたアントン・ハイセル事業が失敗に終わって多額の借金を背負ったことだってある。でも、猪木は「借金も財産のうちだ」とモハメド・アリ戦の負債18億円と共に笑い飛ばしていた。
「(うまくいったら)世界に向けてバカヤローと言える時が来るよ」と笑いながら、猪木は水プラズマの凄さを熱く語っていた。
「さよならだけが人生だ」
2月20日の喜寿の祝宴で、大勢の客を目の前にして、猪木はこんな詩を読んだ。
「花に嵐のたとえが
あるように
さよならだけが
人生だ
人は出会いと別れの
交差点
今日は明日への
おくりもの」
アントニオ猪木は今でも強烈過ぎる存在だ。
猪木自身が願うように「フーッと風が吹いて、砂漠が形を変えるように」本当に自分の足跡を消し去ることなど、果たしてできるのだろうか……。