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快挙と恩返しのフェブラリーS。
モズアスコットと人気薄2着馬の秘話。
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2020/02/28 08:00
フェブラリ―Sを制したモズアスコットは、史上5頭目となる芝&ダートGI制覇となった。
勝利数が伸びず、大怪我も経験。
1993年9月生まれで現在26歳。中学生の時、家族で行った旅行先で乗馬をしたことで馬と出会った。すぐに競馬場へ連れて行ってもらい、観戦したのが後にアーモンドアイの母となるフサイチパンドラが勝利したエリザベス女王杯(GI)だった。
2012年に騎手免許を取得すると、美浦・小島茂之厩舎からデビューを果たした。競馬学校卒業時は同期の中で最も優秀だった生徒に贈られるアイルランド大使特別賞を受賞。「ダービーを勝ちたいし、世界に通用するジョッキーになりたい」と大きな夢を抱いての船出だったが、実際には厳しい現実が待っていた。
思うように勝つことは出来ず、フリーになったがそれでも結果を出すのは難しかった。また、'17年には大怪我を負った。そこで昨春、心機一転、美浦を離れ栗東へ移籍。高橋亮厩舎の所属となった。
9年目の初GIで2着にも「悔しい」。
苦しみながらもそうやって努力を続ける姿勢を見てくれている人はいた。ケイティブレイブの杉山晴紀調教師や瀧本和義オーナーらもそんな人物だった。こうしてデビュー9年目で初めてとなるGI騎乗の機会を得ると、2着に善戦。レース後に言った。
「オーナーや杉山先生、それから高橋先生にも感謝しかありません」
さらにひと呼吸置いた後、感謝の言葉を続けた。
「栗東に行ってから小島先生とはなかなか話をする機会もなくなってしまいました。でも、今回のGI騎乗が決まった後に顔を合わせた際『良かったな、頑張れよ』と言っていただけました。当然、小島先生にも感謝しています」
2着という結果に関し、本人は「悔しい」と語っていたが、1番人気馬が圧勝する中でのこの結果は決して悲観するそれではなかっただろう。感謝すべき多くの人達に恩返しする意味でも、大舞台で更に上の着順を掴める日が来るよう、応援したい。