松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
松岡修造とパラ陸上代表・高田千明。
元五輪選手コーチとの出会いとは?
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph byNanae Suzuki
posted2020/02/24 08:00
元オリンピアンの大森盛一コーチと共に、息子の諭樹くんを交えて取材に臨んでくれたパラ陸上日本代表選手の高田千明。
バルセロナ五輪では当日メンバーから外れ……。
大森「僕はバルセロナにも日本代表として行っているんですけど、実際に走ることはできなかったんですよ。当日のメンバー発表で、僕と100mの日本代表だった伊東浩司さんが外されて、レースを観客席から見ることしかできなかった。やっぱりその悔しさがあったので、そこからの4年間を必死で頑張ったんです」
松岡「その4年間があったからこそ、あの記録が出せた」
大森「はい。そこに至るまでに400m走の種目で世界選手権にも出たんですけど、予選を通過することができなかった。初めて'96年のアトランタで予選と準決勝を通過して、あの決勝の舞台に立てたんです。世界のトップ中のトップが争って、順位がつくレースというのはこんなにもすごい雰囲気なのかって。場の力というのをすごく感じて、あの体験を後から続く人たちにも伝えたいなと思いました」
松岡「それが今、自身のアスリートクラブで陸上を教えている大森さんの原点なんですね。今の話を聞いて、千明さんはどう思いましたか。このアスリート感覚は共有できますか」
高田「単純にすごいなって思います。頑張って、努力をして、やるべきことをやれば夢は掴めるという信念を持っている方なので、大森さんについていけばまず間違いなく良い走りは身につくんだろうなっていうのはありますね」
松岡「この人についていこうと思えたのはいつ頃からなんですか」
高田「いつかなぁ。最初にチームの練習に混ぜてもらったときは、まだ大森さんとペアは組んでいなかったんです。コーチだったんですけど、最初の3カ月は口も利いてもらえなくて」
松岡「ひどいですね」
高田「ほんとそう! 何の指導もしてくれなくて。周りの子たちは『手がこう、足はこう』と教わっているのに、私のことは無視。だからずっと私は嫌われていると思っていて……」
松岡「どういうことですか? 大森さん」