松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
松岡修造とパラ陸上代表・高田千明。
元五輪選手コーチとの出会いとは?
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph byNanae Suzuki
posted2020/02/24 08:00
元オリンピアンの大森盛一コーチと共に、息子の諭樹くんを交えて取材に臨んでくれたパラ陸上日本代表選手の高田千明。
高田「両親は健常者のように育ててくれた」
松岡「じゃあ、最初は両親も障がいがあることには気づいていなかったんですね」
高田「そうですね。ある日、5歳くらいだったと思うんですけど、絵合わせのカルタをやっていて、父親が私の目線がちょっとズレていることに気づいたんですね。正面が見えないから、見える位置に顔をずらすんですけど、その動きがおかしかったようで。それで病院で診てもらったら、先天性の病気であることがわかりました」
松岡「千明さんもショックだったでしょうけど、ご両親も相当悩まれたでしょうね」
高田「病気のことを調べて、病院もいくつも回って、遺伝子とかも調べたみたいです。結局、父と母の遺伝子上の問題で目に障がいが出ていて。私は3姉妹の長女なんですけど、一番下の妹も同じ病気で生まれているんです。でも、両親は次女と同じように2人を厳しく叱咤激励して健常者と同じ様に育ててくれたんです」
松岡「大変厳しいお母さんのようですね……」
高田「でも、口癖のように言われていたのは、『親はずっとあなたの側にはいてあげられないんだからね』ってことです。後々1人になっても困らないように、小さい頃から何でもできるように厳しく育ててくれたんだと思います」
松岡「早く自立させようと……」
松岡「大森さんはこういう話を細かなところまでご存じなんですか」
大森「よく聞いてます。お母さんも一緒に遠征に行ったりするので、そうだったんだろうなって感じで(笑)」
高田「気づくといないもんね、うちの親は。一緒に買いものに行っても、ふらふらとお店に入っちゃって、突然いなくなるんですよ。いつも『用があったら呼んでね』って。必要以上に手を貸すことはないです」
ここでトイレに行っていた諭樹くんが対談に加わる。「お腹の調子が良くない」という諭樹くんに、松岡さんが「お腹、本気出せ!」とひと言。諭樹くんは笑顔になり、お母さんの側に腰を下ろした。