セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
サンプドリア移籍決定の吉田麻也。
ラニエリも「主役になれる」と歓迎。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byUniphoto Press
posted2020/02/08 11:50
プレミアでこれだけ長期間プレーした日本人CBは、吉田麻也しかいない。守備の国カルチョへの挑戦で、さらにその見識とプレーの幅を広げてほしい。
最年長監督ラニエリの地道な再建。
昨夏にも一度起こった売却騒動の余波で、前監督ディフランチェスコのチーム作りは遅れた。複数の選手たちはシーズン序盤の迷走を「試合毎に戦術アプローチがコロコロ変わって混乱した」と苦々しく振り返る。
その点、リーグ最年長監督ラニエリは流石、そのあたりをよくわきまえている。昨年10月中旬の就任以降、海千山千の68歳は、開幕後ボロボロだったチームにじわじわと手を加えてきた。
ポーランド代表DFベレシンスキが母国メディアに語ったところによれば「練習で毎日8km走らされる。プレミアリーグ流にフィジカルを鍛えろということだと思うけど、わかりやすくていい」。
長老ラニエリに導かれるサンプドリアは彼の就任から12月にかけてクリーンシートを4回記録し、降格圏を脱出。本来ならこの勢いに乗じ、残留争いに向けて冬の市場で積極的に動くべきだったが、先述した経営事情からフロントは及び腰のまま。
期待をかけていたDFムリージョがセルタへ去り、DFフェラーリも怪我で戦線離脱すると、本職のCBが足りなくなった。昨季在籍したDFトネッリをナポリから再度獲得したが、本物のアタッカーたちを揃える上位勢とのカードでは、やはり層の薄さが如実に出る。
ラツィオ戦大敗でCBコンビに激怒。
1月19日のラツィオ戦では、得点王レースを引っ張るFWインモービレにトリプレッタ(=ハットトリック)を許し計5失点。コリーとヒャボットのCBコンビは散々な出来で、温厚なラニエリも「着任して以来最低の試合だった。ボールの競り合いにことごとく負けてちゃ話にならん」と大激怒。
よほど腹に据えかねたのか、TVカメラの前で迷言まで飛び出した。
「今晩のメニューは決まった。オリーブオイルと塩、胡椒を持ってきてくれ。選手たちを全員生きたまま食ってやる」
スコアレスドローで凌いだサッスオーロ戦を挟んで、ホームに迎えた2日のナポリ戦で守備陣はまたも大量4失点。今度はセンターバックに復帰2試合目のトネッリとコリーが先発したが、相手のスピードについていけず、地元紙から「落第コンビ」の汚名を頂戴した。
だから、市場最終日ギリギリになって電撃獲得された“プレミアから来たチェントラーレ(=センターバック)”吉田への期待は決して小さくない。