才色健美な挑戦者たちBACK NUMBER
元なでしこの永里亜紗乃が語る
姉・優季とのライバル関係。
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph byYuki Suenaga
posted2020/02/05 11:00
姉のドイツ移籍で変わった関係性。
関係が変わったのは2010年に姉がドイツのクラブチームに移籍をして、距離ができてから。メールでやりとりをすることが増えて、それまで素直に言えなかったことも、メールでなら伝えることができた。姉も一人でドイツで頑張っていて、辛い時期だったし、私がいい話し相手になっていたみたいなんですね。それまでサッカーの話なんてしたことがなかったんですけど、私が姉の試合を見て感想を伝えたり、そういうことを自然とできるようになりました。
色々と話をするようになると、姉は姉で私をライバル視していたそうなんです。私は普通にサッカーをしていただけだったけど、うまいプレーをしているのを見ると、「ヤバイ」って気が気じゃなくなって、すぐに練習をしていたそうなんです。
結局、姉は努力の天才というか、私とは違ってプレッシャーをしっかり感じて、努力をして、結果に結びつけていた。すごく意外でしたね。
そういう話をしているうちに、小さい頃に姉と一緒にプレーをしていたのは楽しかったな、と思い出してきたんです。この頃から、この人と一緒にプレーしたいなって、なんとなく考え始めるようになりました。
自分の思いを伝えることで成長した。
その思いが強くなったのが、2011年の女子ワールドカップ。優勝して、紙吹雪が舞う中、姉が壇上に立っている姿を見たときに、どんな感じなんだろう、羨ましい、私も一緒にプレーをしたいとすごく思ったんです。反面、今の自分のモチベーションや実力を考えたら、絶対に代表には入れないということも分かった。自分の状況を分析して、一回飲み込んで、じゃあ何をしたらいいのかと考えたときに、海外に行きたいという明確な目標が見えて、その思いを初めて人に伝えたんです。
それまでは与えられたものを、やってきただけだったんです。それだと責任って生まれないんですよね。だけど、自分が言ったことに対して行動が伴わなかったら、「あなた言ったよね?」って指摘されますよね。言った以上は自分の責任になるし、その責任がいいプレッシャーになって自分を奮い立たせる材料になる。
あと、何も言わなかったときは、周りも私が何を考えているか分からないから、特に何かをしてくれることもなかったんです。でも自分の思いを伝えて、誰かに相談をすると、自分が思っている以上にみんな真剣に考えてくれて、アドバイスをくれたり、協力をしてくれたんです。目標を立てること、それを言葉にすることの大事さをすごく感じたし、あのとき自分はひとつ前進したと思っています。