フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
フィギュア女子、驚異のロシア勢。
強さの鍵、ジャンプのルーツを探る。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byMaja Hitij/Getty Images
posted2020/01/28 11:30
欧州選手権で上位を独占したロシア勢。左から、銀・シェルバコワ、金・コストルナヤ、銅・トゥルソワ。
エテリ王国の強さの鍵を握る人物。
この3人はいずれも、エテリ・トゥトベリーゼとそのコーチングチームに指導を受けている。これまでユリア・リプニツカヤ、エフゲニア・メドベデワ、アリーナ・ザギトワなど多くのチャンピオンを育ててきたコーチである。
今はこのコーチが勢いがある、というチャンピオンメーカーと呼ばれたスターコーチたちは過去に何人も存在した。現在ではエテリ王国とでも呼ぶべき彼女のチームが、少なくとも女子においてはフィギュアスケート界のトップに君臨して揺るぎない地位を確立している。
取材嫌いでも知られるトゥトベリーゼは、なかなかメディアにその素顔を見せようとはせずに、ミステリアスな雰囲気を保っている。もっぱらメディア対応は、アシスタントコーチで振付師でもあるダニイル・グレイヘンガウスが担当。
まだ28歳という若さで容姿端麗である彼とトゥトベリーゼの2人に注目が集まりがちだが、実はエテリ王国の強さの鍵を握っているのは、このチームの3人目のコーチ、セルゲイ・デュダコフではないかと筆者はにらんでいる。
全体のディレクター的な役割。
トゥトベリーゼはもともとアイスダンサーで、現役時代はエレナ・チャイコフスカヤ、ナタリア・リニチュック、そしてタチアナ・タラソワなど、名を馳せた一流コーチたちの指導を受けてきたという。
だがもちろん周知の通り、アイスダンスにおいてジャンプはルールで許可されておらず、トゥトベリーゼも選手時代は幼少時を除くとジャンプのトレーニングはほとんど受けていないと考えて間違いない。
彼女はオーケストラの指揮者のように、全体のディレクター的な役割を果たしているのだろう。