イチ流に触れてBACK NUMBER
史上最高の遊撃手ジーターが殿堂へ。
“後継者”イチローとの特別な関係。
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byKyodo News
posted2020/01/25 11:50
2012年から2014年までヤンキースのチームメイトとしてプレーしたジーターとイチロー。勝利をハイタッチで祝う。
ジーターが「一生忘れられない」試合。
だが、10月13日、タイガースとのリーグ優勝決定戦の第1戦。世界一の夢は音を立てて崩れた。イチローは「2番・左翼」で出場し6打数4安打2打点の活躍を見せたが延長12回の末に敗れた。敗因はキャプテンの離脱だった。
12回表、ジーターが遊ゴロを処理に行った際に転倒。左足首を骨折し、そのまま退場となった。絶対的リーダーの復帰絶望と言える大怪我にチームは力を失い4連敗。
悲願は夢と消えたが、ジーター氏はこの試合の後の時間は「一生忘れられない」と、先のプレーヤーズ・トリビューンで明かした。
2人だけの、特別な時間。
「試合後どれだけの時間が経っただろうか。みんなが帰路へつき、クラブハウスにはもうイチと僕のふたりだけしかいなかった。多くの話をしたわけではないが、イチはただそこに座り僕のために時間を使ってくれた。長い時間を経て僕が松葉杖を使い立ち上がろうとしたら、彼も立ち上がった。僕が気持ちの整理をつけるまで彼は待ち、見送ってくれた。
これが敬意の表れかどうか僕にはわからない。彼に聞いてみないとね。だが、僕には彼の気持ちはわかる。僕らには二塁ベース上で続いた何年にも及ぶ会話やチームメイトとして過ごした時間がある。あの夜、僕らの間にあった長い沈黙は何よりも僕の心に刻まれている」
この時のことは後にイチローさんからも聞いたことがある。特別な時間であったことは話してくれたが、それ以上を第三者が突っ込むのは野暮な話だった。
ジーター氏はこの記事でこう結んでいる。
「イチローには敬意を表するよ。彼は一生に一度現れるかどうか、そういった存在だ」
ジーター氏が成し得なかった満票での殿堂入り。その夢を託す存在、それがイチローさん。キャプテンにとって、最高の後継であることは言うまでもない。