ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
1年目キャンプ初日に右肘故障。
ハマのムードメーカーの波乱万丈。
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byKyodo News
posted2020/01/19 11:30
齋藤は成田高、立大、JX-ENEOSを経て2018年にドラフト4位で入団。2年目の昨季はプロ初登板を含む16試合に登板。
木塚コーチの言葉を噛みしめて。
「いいときに抑えるのは当たり前。悪いときであっても抑えるのが一軍のピッチャーなんだ。悪いときにどうできるのか、考えてこい」
齋藤は木塚コーチの言葉を思い出し、噛みしめるように言った。
「いいときはつづくものではないけど、確かにまわりのピッチャーは悪いなりに抑えていました。自分の持ち味は何なのかを理解し、それを武器にしていた。そこが自分にはまだ足りない部分だと思います」
すると齋藤は顔を上げ、声のトーンは力強いものになった。
「ファームに行ったときは落ち込んでいたんですけど、まわりの人たちから言われたんですよ。1年前は投げられなかったことを考えれば幸せだろうって。確かにそれもそうだなって思えたら前を向くことができました。やれることやって、もう一度、這い上がろうって」
齋藤が再びチャンスをもらったのは、好投した初先発の中日戦だった。
「こいつは使えるぞと信用されることが」
さて今シーズン、齋藤は中継ぎとしてはもちろんだが、上茶谷大河、平良拳太郎、大貫晋一、井納翔一、京山将弥ら右の先発陣に割って入ることも考えられる。やはり先発でやっていきたいのかと尋ねると、齋藤はかぶりを振った。
「絶対に先発という気持ちはないんです。まずは中継ぎで、こいつは使えるぞって信用されることが第一ですね。1イニングはもちろん、ロングリリーフでも先発でも使えるぞって。右と左の違いはありますけど、昨年の石田(健大)さんみたいに、どんな場面であっても任せてもらえるようなピッチャーになりたいんですよ。
困ったときに使ってもらえるような。昨年はホールドの場面であまり投げることができなかったので、勝ち試合に貢献できるようになりたい。ひとつひとつステップを踏みながら」
どん底から這い上がった男は、どんな場面であっても準備OK。求められれば躊躇なく投げるつもりだ。
快活な性格の齋藤は投手陣のムードメーカーでもある。いつも周囲には笑いが溢れており、渾身の一発ギャグには定評がある。だが、最近は困ったこともあるらしい。
「齋藤は一発ギャグがあるから一軍に帯同できていたと言われたぐらいですからね(笑)。けど、ギャグを考えて言うのも結構大変なんですよ」