ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
1年目キャンプ初日に右肘故障。
ハマのムードメーカーの波乱万丈。
posted2020/01/19 11:30
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
Kyodo News
もしかしたら一軍のマウンドに一度も立てずプロ生活を終えるかもしれない。まだ自分はスタートラインにさえ立っていないのに……。
横浜DeNAベイスターズの齋藤俊介は不安に駆られた日々を振り返る。
2017年のドラフト会議でJX-ENEOSから4位で入団した右腕の齋藤をアクシデントが襲ったのは、希望に満ち溢れていた春季キャンプの初日だった。まさかの右肘炎症により、3日目に一軍のキャンプから離脱した。
即戦力として期待されていた齋藤にとっては痛恨のスタートだった。しかも悪いことは重なり、齋藤はさらなる苦難を味わうことになる。ファームで調整していた初夏、右肩を負傷したのだ。診断ではクリーニング手術が必要だということだった。
「肩にメスを入れて復活するのは難しいと聞かされていたので葛藤はありました。心配でいろんな人に話を聞いたのですが、肩を痛めて苦労していた水野(滉也)に相談したら、やったほうがいいよと言ってくれたんです。球団に手術をすることを伝えましたが、その夜心配になってしまい電話をして、やっぱり止めますと言ってしまったり……。とにかく不安感はすごかったですね」
しかし痛みを隠し7~8割の力でピッチングをして通用する世界ではないことは理解していた。齋藤は翌年の復活を目指し7月2日に手術を受けることになった。結局、登板機会がないまま、齋藤は2018年のルーキーイヤーを終えている。
学生時代プロ志望届を出していない。
期待の右腕として注目を浴びていたが、じつは成田高校から立教大学を経て社会人となった齋藤は、学生時代にプロ志望届を出していない。
「まわりにはプロに行きたいという選手はいましたが、僕は自分の実力がわかっていたので“プ”の字もなかったし意識もしていませんでした。とにかく今いるステージで一番になることだけを考えていたんです。目先の勝負というのか、今なにをすべきか常に集中していましたね」
結果的にこのような姿勢がプロへの道を拓くことになったわけだが、この齋藤の気質は手術後のリハビリ生活においてもプラスになった。焦らず、自分と向き合い、なにが最善のことなのか考え、集中し実践した。