濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
那須川天心の強さ、まさに“悪魔的”。
適正体重と新技から見えた新領域。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by(c)RIZIN FF Susumu Nagao
posted2020/01/09 19:00
圧倒的な勝利で2019年を締め括った那須川天心。2020年は「オリンピックより面白いことがしたい」。
契約体重56kgで“重り”を取り去る。
この試合の契約体重は56kgだった。互いのベストウェイトである55kgに、少し余裕を持たせた設定だ。
このところ、那須川は57~59kgで試合をすることが多かった。一昨年の堀口恭司戦、昨年のRISE世界トーナメントも58kg。階級を上げることで、彼は話題性と勝負性のあるカードを成立させてきたのだと言ってもいい。
しかし今回、同階級の相手と体を絞って対戦することで、那須川は“重り”を取り去った状態になった。スピードとキレが増すのは当然のこと。しかもキャリア初期、10代の56kgとも違う。フィジカルを鍛え、(本来の)自分より重い相手に勝ってきた技術と経験値が加わっていた。
RIZINの榊原信行CEOは、那須川の父であるトレーナーの弘幸氏やRISEの伊藤隆代表から「55kgの天心は無敵」だと聞いていたという。
“心”と“技”もアップデート。
那須川は、絶好調の理由を「江幡選手が相手だから」とも語っている。「知らない外国人が相手とかじゃないので」と。
「江幡は強い」、「今回は那須川が負けるかも」という声を聞くたびに「全部ひっくり返してやる」という思いが高まった。
難敵を迎えて上がったモチベーションは、技術の向上にもつながったようだ。ダウンを奪ってからのラッシュ中に見せたジャンプから2回転しての蹴りは、フィギュアスケートにちなんでアクセルキックと命名。「あれで倒したかった」と言うから単なる“見せ技”ではない。本気で“新必殺技”を考えてくるあたりがニクい。マンガの世界である。
試合後にはツイッターでこんな書き込みもしている。
「今回の為に新しく用意して出たのは右の縦ジャブ 右フック アクセルキック 顔面三日月蹴り まだまだ新しい技が沢山あります」