濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
那須川天心の強さ、まさに“悪魔的”。
適正体重と新技から見えた新領域。
posted2020/01/09 19:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
(c)RIZIN FF Susumu Nagao
「那須川天心、めちゃくちゃ強いな……」
あまりにも当たり前なことを書いて申し訳ない。
しかし大晦日の『RIZIN.20』(さいたまスーパーアリーナ)を見て何よりも感じたのはそれだった。
プロ公式戦全勝、世界中の強豪を倒してきた那須川が強いのは誰でも知っていることだ。しかしこの日、彼が見せた強さは誰も予想できないレベルに達していた。
対戦したのは江幡塁。これまで“打倒ムエタイ”路線で活躍してきた新日本キックボクシング協会のエースで、昨年は『KNOCK OUT』の1DAYトーナメントでも優勝している。ヒジ打ち有効のキックボクシングルール・55kg級において日本最強の選手であり、那須川にとっても難敵と思われた。
そんな相手から3度ダウンを奪い、試合を終わらせるのに要した時間は2分46秒でしかなかった。1ラウンドTKO。「江幡選手はパンチが強かった」と言う那須川だが、顔面に蹴りをヒットさせてからは完全なワンサイドだった。
「倒せる気しかなかった」
試合後のインタビュースペースで、那須川が真っ先に触れていたのが契約体重のことだった。
「久々に適正階級に近い体重でできて、非常に調子がよかったです。アップの時点でメチャクチャ調子いいなと。動きにキレがあって、今年一番の動きでした」
入場時に叫ぶ場面もあるなどテンションの高さについて聞かれると「試合前から“早く試合してぇ!”みたいな感じだったんです。倒せる気しかなかった。変な自信というか、気を抜かなければ勝てると」。