話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
神戸で誰よりも不可欠な男・山口蛍。
劣勢で輝き、初タイトルをもたらす。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byGetty Images
posted2020/01/08 20:00
イニエスタらビッグネームがどうしても目立つが、山口蛍の不可欠さも誰もが同意するところだろう。
初タイトルは神戸を変えるのか。
天皇杯は、山口にとって2019年に神戸に移籍してきて初のタイトルだった。徐々にチームの手応えが増す中での優勝だけに、喜びもひとしおだ。
「セレッソで優勝して初めてタイトルを獲った時と比べるのは難しいですけど、神戸というタイトルを獲ったことがないチームが取れたこの瞬間に居合わせることができたのはすごく感慨深いものがあります。今日いた全員が、神戸の歴史に名を連ねることができた。すごく大きな意味があることだとと思います」
神戸はこれで「無冠のクラブ」から脱した。
タイトルを取ると、チームは変わると言われる。チャンピオンとしての自信が、彼らのプレーをさらにポジティブなものにしてくれるだろう。その自信は個人ではなく、チーム全体に広がる強みである。
山口は言う。
「チームは来年変わると思います。実際、僕らもセレッソでタイトルを獲得してから、残留争いをしてJ2降格とか、そういう悪い流れがなくなったんで」
イニエスタやビジャが頼りにした男。
今シーズンの神戸はJ1残留争いも経験した。
初タイトルで選手の意識が高まればチームはまた一歩前進できるはずだが、山口は神戸が常勝チームになるために必要なものがあるという。
「相手に押し込まれている、または押し込んでいる時間の中、みんながどういうプレーをするのか、まだバラバラなところが多少ある。そういうところでの、全員の意思統一が重要。声を掛けあわずとも全員が感じてその場で最適なプレーができるようになれば、もっとチームは強くなると思います」
もの静かな男だが、ピッチ上では玄人好みの存在感を見せる。
そんな山口のプレーに、イニエスタ、ビジャらも頼もしさを感じている。優勝した時、イニエスタが一番嬉しそうに抱き合ったのは山口だった。もちろんトルステン・フィンク監督も「山口は今季かけがえのない選手でした」と絶賛した。
2020年シーズン、神戸はリーグ戦に加えてACLを戦う。神戸は山口を軸にさらにひとつ先のステップに進む。