話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
神戸で誰よりも不可欠な男・山口蛍。
劣勢で輝き、初タイトルをもたらす。
posted2020/01/08 20:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Getty Images
ヴィッセル神戸がクラブ創設25年目にして初タイトル獲得。
クラブの歴史に名を刻んだチームの中で、「彼がいないと」と思わせてくれたのはイニエスタやポドルスキなど世界のビッグネーム以上に、山口蛍だった。
鹿島との決勝戦、山口は攻守、とりわけ守備で際立っていた。
攻撃ではサイドバックに近い場所でサポートして、ボールを回し、タイミングのいいところでイニエスタなどにつけ、リズムを生んでいた。守備ではセカンドボールを拾い、相手ボールを狩る動きが秀逸だった。鹿島に深刻なダメージを与えた2点目も山口がセカンドボールを拾って、右アウトサイドの西大吾に繋げて生まれたものだ。
圧巻の出来を見せたのは、後半5分過ぎからの鹿島の怒涛の攻撃を受けた時だった。山口はボールホルダーには強烈なアプローチを見せ、バイタルが空くとサッとスライドしてスペースを埋め、相手の自由にボールを持たせなかった。
山口のアプローチのタイミングと強さがあるので、周囲の選手もためらわずに相手に行くことができる。山口の守備が周囲の選手の守備意識を高くし、それが全体的に集中して守ることに繋がった。
苦しい状況でこそ光る。
山口自身も、苦しい時間帯にこそ自分の持ち味を出せたという。
「自分たちの展開ではない、相手に押し込まれる時間が多い中、自分がカバーするとか、ボールを奪うとか、自分の良さが活きるなって思っていたし、その結果チームとしてうまく守備が出来たと思います。
決められてもおかしくないシーンでは全員で体を張って防げていたんで、そういうところが今日の試合の明暗を分けたかなと思います。ただ、今日は勝ちましたけど、上手くいかない部分が多かった」