プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
内藤哲也の東京ドーム大合唱が消滅。
オカダに勝利も伏兵のKENTAが悪行。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2020/01/06 17:15
輝く東京ドームのマットに2本のベルトを並べ「ノスオトロス、ロス・インゴベルナブレス……」まで叫んだ内藤哲也。
内藤の願いが叶うのはいつも時間がかかった。
内藤は「ワールドタッグリーグ」のシリーズに前半参戦して、静かにホワイトとの前哨戦をこなしていたが、不吉なことも頭をよぎったはずだ。「引退まで考えた」くらい体調はすぐれなかったという。でも、3週間の休養でここまで戦えるようになった。
内藤の願いが叶うのはいつも時間がかかった。
2012年にはG1クライマックスの優勝に一番近かった時も足のケガというアクシデントで欠場を余儀なくされて、初優勝は翌年の2013年だった。
今では大人気の「ロス・インゴベルナブレス」でさえ、当初はまったく受け入れられなかった。
2年前に唱えた東京ドームでの「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」大合唱プランも昨年は頓挫してしまった。それと同じように「2冠取り」というプランも、また先延ばしなのか、と疑ってかかってもおかしくはないだろう。
だが、そんな心配をよそに内藤は奇跡的な踏ん張りを見せた。後は、ファンの声援の大きさだったのだろう。効果的な浴びせ蹴りも繰り出した。
「勝つともっと気持ちいいぞ、コノヤロー」の記憶。
オカダは2020年も突っ走る覚悟で白を基調としたガウンで、リングシューズも白に変えて来た。花道にオカダ・ドルやポンド紙幣が舞うのはいつものことだが、それに照明の暗転まで加えていた。
内藤も白いシャツとズボンに白いガウンをまとっての入場だった。
最終的にフォールされたのはオカダだった。オカダは考えもしなかった敗戦のショックとダメージに控室に戻る足取りはよろけて通路に座り込む場面もあった。
そんなオカダに内藤がリング上からマイクで声をかけた。
「オカダ、東京ドームのメインイベントでの勝利、ものすごく気持ちいいな。またいつか東京ドームのメインイベントで、勝負しようぜ」
内藤は2年前に負けた時、オカダから言われたセリフを忘れていなかったのだ。「勝つともっと気持ちいいぞ、コノヤロー」という言葉を。