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鍵山優真と佐藤駿。ジャンプと表現、
フィギュア次期エースを争う闘い。
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2020/01/02 20:00
氷上ではライバル、リンクを降りればよき友、という関係の鍵山(左)と佐藤。演技後、お互いを称え合う姿をこれまでも見せてきた。
2019年全日本ジュニアで分かれた明暗。
佐藤は11月に行われた地方大会で4回転ルッツを初成功。もし国際大会で成功させれば、憧れの羽生に次ぐ、日本人2人目の大技を手に入れた。
ともに満を持して挑んだ、2019年全日本ジュニア。
佐藤は4回転ルッツを転倒。もともとジャンプで高得点を稼ぐタイプだけに、ジャンプでミスがあると、演技構成点も上がらず、得点が伸びない。
一方の鍵山は持ち前のスケーティングと演技を生かし、251.01点と、非公認ながら当時のジュニア世界最高点を上回る得点で優勝した。
優勝を決めた瞬間、キス&クライで父の正和氏と力強く握手。コーチであり父でもある正和氏の目には涙がにじんでいた。
「絶対に4回転ルッツを降りる」
そこで火が付いたのは佐藤のほうだ。
「悔しい。ジュニアGPファイナルでは絶対に4回転ルッツを降りる」と意気込んだ。
迎えた12月、トリノで行われたGPファイナル。今度は佐藤が主役の座を奪った。
憧れの羽生がシニア部門で出場しており、佐藤の意欲を刺激する。試合のスケジュールは、シニア男子フリーが昼間に行われ、ジュニア男子フリーが同じ日の夕方。羽生が4回転ルッツを2年ぶりに成功する様子を、佐藤はリンクに向かう途中に、携帯のネット画像で見た。
「よしよし、オレもいくぞー」
本番までの待ち時間で、羽生の4回転ルッツを繰り返し見た。
「羽生君が跳んだのが良かった。4回転ルッツの動画を何度も見てイメージを作りました。羽生君はあまり力を入れずに跳ぶ。僕は力で跳んでしまうことがあるので、力を入れないようにして落ち着いて跳ぼうと思いました」