相撲春秋BACK NUMBER
元大関照ノ富士、独白。
苦悩の2年間を乗り越え、関取復帰へ。
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph byKyodo News
posted2019/12/27 11:50
年内最後となる九州場所の13日目。対馬洋を破って幕下で7戦全勝で優勝した元大関の照ノ富士。
でも……体がついていかない。
それまでは、稽古できないまま、筋肉もずっと落ちたままの体で無理にでも出場していました。もちろん治療もしながらで、はっきり言って相撲を取れる状態ではなかったけれど、もし勝ち越せれば――ちょっとでも勝てれば――との気持ちで土俵に上がっていたんです。
でも、体がついていかない。
元気な時なら、筋トレも稽古もやればやるほど良くなるのに、やればやるほど悪くなっていくんですから。もう、そうなると気持ちの面でもやる気がなくなっていくんです。幕下に落ちた時には、「今度こそ相撲を辞めよう」と開き直り、関取の証である白廻しを捨てました。
何度も何度も親方に「辞めたい」と。
辞めようと思った時期は、今までに何度かあったんです。まず最初は、2017年11月、大関から落ちたばかりの時。相撲を取るどころか、見るのも面倒くさい。テレビで相撲を見たくない時期が、それこそ2年近く続きました。「もう相撲を辞めよう」という気持ちは、ずっと心の中にあったんです。
朝稽古に来て、みんなが相撲を取ってるのを見ると焦る部分もあったので、あまり部屋には行かないようにし、そのぶんジムに行ったり、夜も1日に5キロ歩いたり。相撲を辞めるにしても続けるにしても、どっちみち病気は治さなければいけないですから。とりあえずは体を、病気を治すことが先決で、同時に3回目の膝の手術もしたんです。
自分は自分で努力していたんで、師匠(伊勢ヶ浜親方 元横綱旭富士)は治療に専念するのを見守ってくれていた感じです。
僕、5、6回くらい「辞めたい」と言いに行っているんですが、親方は、「とりあえず、今は体を治すことだけを考えろ。辞める辞めないは、そこから先の話だ」と。