菊池雄星の「Stand Up」BACK NUMBER
菊池雄星が感じた日本とMLBの違い。
「個人が持つ自由と責任」
text by
菊池雄星Yusei Kikuchi
photograph byAFLO
posted2020/01/08 11:40
菊池雄星のメジャー1年目は試行錯誤の年だった。新たな場所で、新たな能力を身につけるために。
足りていなかった「考えて投げる練習」。
「今日の目的」は例えば、カウント0-0から3球で2ストライク1ボールを作ることを目指すとか、あるいは2ストライク1ボールから三振を取るスライダーの練習など、その日ごとにテーマを決めてブルペンに入るのです。何もテーマがなく投げることは良しとされていません。
球数100とか200球とか数字を目標にしてしまうと、この様な取り組みができない気がします。シンプルではあるのですが、目標設定を毎日し、考えながら投げる練習というのは、プロに入ってから意外としてこなかったと気づかされました。
同じ理由で、ピッチングの時はカウントをつけて、バッターを立たせて投げるように言われることが多いです。
自分が日本でプレーしていた時について反省しているのは、自分が意図したボールがいっていない時でも、結果的に抑えられていれば満足してしまっていたことです。
メジャーでは、本当に投げたいボールを投げることが大切で、少しでも甘く入ると打たれてしまいます。それくらい普段から意識を高く持っている必要があります。
それは、今季打たれている時期に気づいたことでもあります。ブルペンで「ここに投げてみな」と指示を受けても、ボールが正確に行く確率が低かった。投げたいところに投げる能力が、実は足りていないことがはっきりと自覚出来ました。
追い込んでから投げるスライダーと、カウントを取るスライダーの投げ分けについて頭の中ではいつも考えていても、日本ではそういう練習をしていなかった。つまり、試合でぶっつけ本番で投げて、その結果に一喜一憂していました。
メジャーの投手は制球が悪い?
マリナーズにはタイプの違う左投手が多くて、彼らからも色んなことを教えてもらいました。エースのマルコ・ゴンザレスはストレートの球速が140キロ出るか出ないかですが、16勝もしています。
彼はブルペンで全球、「ここへ投げる」と宣言してから投げています。
「今日は1ストライク1ボールからのピッチングを極めよう」や、「2ナッシングからボールのスライダーを投げよう」など、1球1球に根拠を持って練習しているのです。
メジャーの投手は制球が悪いという声がありますが、そんなことはありません。ローテーションの軸として回っている投手は総じて制球が良いです。その陰には、こういったブルペンでの練習方法もあるのではないかと思います。