ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
谷口徹、藤田寛之、片山晋呉。
第一線でもがくベテランの生き方。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byGetty Images
posted2019/12/27 07:00
日立3ツアーズ選手権ではPGAツアーの一員として若手たちと争った谷口徹。
賞金シードはツアープロの“看板”。
谷口を差し置いて、今年、歴代2位の記録を23年連続に伸ばした選手が2人いる。
50歳の藤田寛之と46歳の片山晋呉である。
藤田は2012年には40代にして谷口と賞金王の座を争った。3勝した'14年以来、優勝からは遠ざかっていながら、今年はランキング25位でシーズンを終えた。権利を有するシニア入りする気配も今のところない。漏れ伝わった谷口の「涙」の話を聞き、彼は「自分も泣くかもしれないですよね」と言った。
「賞金シードというのはツアープロにとっては、やっぱり“看板”ですから。ずっと持ってやってきた看板を下ろさなくてはいけないという寂しさがある。看板のためにみんな努力をしている。努力をするほど感じるものがある。来年はその看板なくプレーする寂しさが谷口さんの涙になる。それは自分に対するものではなく、サポートしてくれる人たちへの涙かもしれない。それぞれあるんですよ」
谷口の涙を理解する藤田。
同世代、しかも用具使用契約を結ぶメーカーも同じため、ふたりをライバルのように見る目もあるが、それぞれのキャラクターがまったく違うからおもしろい。谷口の鋭い舌鋒を、クールに受け流す藤田。コントラストが際立つやり取りの妙が軽快ではあるが、思考の源流はきっとそう変わらない。
「ただ、試合に出られれば良いというのは、我々でないとわからないのかもしれない」。
だから来年も出場権があるにもかかわらず、涙した谷口に共感できる。
「ぜんぜん不思議じゃないんですよ、自分からすると。もう、お金儲けのための職場が欲しいわけじゃない。意地とかプライドで“もっている”部分がある。年を取っていくと葛藤も増える。そのなかで1つ失った。それがただの1つじゃなくて、ツアープロとしてかけがえのないもの。なんとなく自分は分かる。感動しますね。ああいうのは」