デブライネとのマッチアップも。

　中村は現在、香港プレミアリーグの大埔足球会にローンで所属している。期限付き移籍をする前の今夏には、保有元の傑志体育会の一員としてマンチェスター・シティとの親善試合に出場。中盤でマッチアップしたケビン・デブライネについては「上手いとか、そんなレベルじゃなかった。でも、ものすごく楽しかったです」と嬉しそうに語る。

　そのほかにも複数の香港のクラブに所属してきたMFには、現代表に多くの仲間がいる。

「いろんなチームでやってきたので、知っている選手ばかりです。今のチームメイトも何人かいますし。注目選手はタン・チュン・ロク（広州R&F）。中国スーパーリーグでも少しずつ試合に出始めている期待のボランチです。攻守にダイナミックなプレーを見せてくれます。まあ僕は（香港代表戦を）見ないですけど」

「香港は第一の家みたいなもの」

　その理由は訊かなかったが、気持ちはわかる気がする。日本国籍を放棄してまで香港のパスポートを手に入れたのに、思うように代表チームに貢献できていない悔しさはあるはずだ。ただそれでも、本人の香港への愛情は薄れていない。

「僕にとって、香港は第二の故郷というよりも、第一の家みたいなもの。僕はここでプロのキャリアをつくり、家庭も築いています。そして、香港の人々の優しさに、ずっと触れてきました。

　うまくいかない時や困っている時に、どれだけ助けられてきたことか。だから今後も、サッカーを含め、どんな形でもいいので、香港にお返ししたいんです。夢は香港代表がW杯に出場すること。今はもう、選手としてできることは少ないかもしれないので、いつかそれが叶うように、できることをやっていきたい」

　家賃など物価の高さで知られる香港では、アマチュアのサッカーは盛んだが、プロはそうとは言えない。中村のように選手は「プロと言えるくらいのサラリー」をもらっている人が大半ながら、指導者は掛け持ちをしなければ生活していけない人も多いという。ビジネスが最優先されがちで、スポーツで身を立てようとする人も少ない。

【次ページ】　16時15分、中国国歌は二度鳴るか。