フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
「ネイサンと競うのは大好き」
羽生結弦、若きライバルへの闘志。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2019/12/08 16:00
イタリア・トリノで行われたグランプリファイナル男子シングルのフリーで、4ルッツを含む4回転ジャンプを5本成功させた羽生。
ネイサン・チェンへの気遣い。
熱狂的に歓声と拍手を送る観客に応え、ブリアン・コーチと一緒にキス&クライに座る。
この日は羽生の誕生日で、フラワーガールの一人が誕生日ケーキを手に近づいてきたのを動作で止めたのは、おそらく次の滑走だったネイサン・チェンに気遣ったのだろう。
フリー194.00で、総合291.43を手にし、最終滑走のチェンの演技を待つこととなった。
まったく無駄のないジャンプ。
くまのプーさんのぬいぐるみで埋まった氷の上に、ネイサン・チェンが出てきた。
ベラ・ウォンによる新しい衣装に身を包んだチェンは、『ロケットマン』のフリーを4フリップ+3トウループで開始した。4ルッツ、そして4トウループ+1オイラー+3サルコウと、軽々とジャンプを決めていく。
余分な力も、足りない力もない、まったく無駄のないジャンプとしか形容出来ない、みごとな着氷だった。
『グッバイイエローブリックロード』のメロディにのって3アクセルも、タイミングにぴたりとあった。後半の4サルコウ、4トウループ、そして3ルッツ+3トウループも難なくきめると、最後のヒップホップのコレオシークエンスで観客が盛り上がった。
224.92の点が出た瞬間、チェンの3連覇が決定した。総合335.30は、彼自身が持っていた歴代最高スコア323.42を10ポイント以上上回る新記録だった。結局羽生の3年ぶり5度目のタイトルは成らず、チェンが3年連続の優勝となった。
「何かを成し遂げたかった」
羽生は会見で、フリーで4種類の4回転を5回入れるという構成はいつ決めたのかと聞かれると、SPのすぐ後、と答えた後にこう付け加えた。
「勝てないとは思っていたけれど、何かここで成し遂げたいという風に思っていて、結果的に4回転ルッツがループとともにフリーで決められたことがぼくも嬉しく思います」