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フォロワー4000万超のビッグマッチ?
ボクシングYouTuber興行に賛否両論。
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2019/11/27 08:00
ともにツイッターのフォロワーは500万人超え。インスタグラムではKSI(左)が約760万人、ポールはそれを上回る約1700万人のフォロワーを抱える。
今後も「ノー」とは言わないだろう。
筆者が思い出したのは1992年6月、映画スターのミッキー・ロークが両国国技館のリングに登場した際のことだ。初回にかすったようなパンチで相手がもんどりうって倒れ、ロークはお粗末なKO勝ち。茶番じみた公式試合を挙行したことで、関係者は批判されてしかるべきだったかもしれない。
ただ、そのセミでは勇利アルバチャコフ(協栄)がムアンチャイ・キティカセム(タイ)と派手な倒し合いを演じ、8回KOでWBC世界フライ級王座を獲得した。ロークが目当てで普段は見ないボクシングにチャンネルを合わせ、結果として勇利の強さに魅せられたスポーツファンは少なくなかったのではないかと想像する。
今回、ボクシング界期待の星であるヘイニー、カネロの対戦候補だったサンダースはどちらも凡戦を演じ、ユーチューバー対決が目当てのティーンを感心させるには至らなかった。しかし、そんな結果になったことはまた別の問題。この興行での世界王者の露出は売り出しの努力とも考えられ、マネージャー、プロモーターは今後も似たようなオファーに「ノー」とは言わないだろう。
ユーチューバーの前座と憤慨するのではなく、アメリカの関係者の多くはアピールの機会と捉える。そんな背景もあって、大半の米メディアも今回のイベントには好意的だったように思える。
求められる興行主の平衡感覚。
もっとも、このような興行に嫌悪感を示すファンの心情も理解できるだけに、筆者もあまり頻発して欲しいとは思わない。短期間に連続で開催すれば、長年のファンのさらなる怒りを買い、世間からのボクシングに対する信用も失いかねない。何事もバランスが大事であり、その平衡感覚を興行主側が持っているかどうか。
案の定、今回の成功で味をしめたハーンは、「またユーチューバーのカードを考えたい」とも述べていた。DAZNの後押しを受け、新たなセレブリティ・ボクシングが組まれることになるかもしれない。 一過性のものにも思えた“ユーチューバー対決”への議論が、今後も継続して行われ続ける可能性が見えてきているのは少々気にかかるところではある。