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フォロワー4000万超のビッグマッチ?
ボクシングYouTuber興行に賛否両論。
posted2019/11/27 08:00
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Getty Images
この試合は正しかったのか――。
試合が終わって約2週間が経った現在まで、依然として論議を呼び続けている異色のファイトがある。11月9日、ロサンジェルスのステイプルズセンターで挙行されたクルーザー級6回戦、KSI(イギリス)vs.ローガン・ポール(アメリカ)戦だ。
この試合は大アリーナに1万2137人の観衆を集めて行われ、両者が交互に見せ場を演出する激戦となった。結局、より鋭いパンチを放ったKSIが2-1(57-54、56-55、55-56)で判定勝ち。技術的には物足りなかったものの、ポールが4回に相手が膝をついた後のパンチで2点減点されるというドラマもあり、 エキサイティングな展開にファンは引き込まれた。
「素晴らしい試合だった。アトラクションとして成立していたし、また見たいと思う」
興行を主催した英国人プロモーター、エディ・ハーンも試合後は満足気にそう述べていた。2018年8月にエキジビションで引き分けだった2人の因縁の再戦は、エンターテイメントとしては間違いなく成功だったと言って良い。
本職はボクサーではなくユーチューバー。
こうして振り返っていくと、ボクシング、あるいはエンタメ業界に詳しくはない人は、いったい何が問題なのかと思うかもしれない。
この試合が話題を呼び続けているのは、メインに登場した2人の本職がボクサーではなくユーチューバーだから。
ともにYouTubeのチャンネル登録者数だけで2000万人超のフォロワーを抱えるKSIとポールは、ボクシングでは何の実績もなかったにもかかわらず、プロデビュー戦を大アリーナで開催し、それぞれ90万ドル(約9770万円)以上の莫大な報酬を手にしたのである。
このように少々軽薄な興行が催されたことに関し、批判的なボクシングファンはアメリカにも少なくなかった。特にアンダーカードにWBO世界スーパーミドル級王者ビリー・ジョー・サンダース(イギリス)、WBC世界ライト級暫定王者デビン・ヘイニー(アメリカ)という2人の世界王者の防衛戦が組み込まれたことが、ボクシングマニアの不満をあおった。
「ユーチューバーの試合を組むだけならいざ知らず、世界タイトルマッチを“前座”に使うとは何事か。ボクシングへの冒涜だ」
そういった声がこの興行に批判的なファンの代表的な意見だった。