All in the Next ChapterBACK NUMBER
プロ野球選手がFAする理由と葛藤。
SB福田秀平が決断前に明かした本心。
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph byNanae Suzuki
posted2019/11/25 15:00
シーズン終了後にFA宣言したソフトバンク福田秀平。進路を決断する直前にインタビューに応じてくれた。
「純粋に他球団の評価を聞きたかった」
――福田選手と言えば、2016年のオープン戦で大谷翔平投手から打った先頭打者初球ホームランが印象に残っています。あの頃から速いストレートを弾き返すことには自信があったんじゃないですか。
「いえ、あの頃はまだ、自分のバッティングに自信を持てていなかったんです。足を活かして三遊間に転がすことを心掛けていたんですけど、そこまで器用なタイプでもないので結果が出なくて……このままではまずいと思っていた2018年の開幕前に、チームメイトやスコアラーの方から『福ちゃんの良いところは引っ張った打球の強さだよ』『ホームランになる角度を持っているし、長所は消さない方がいいんじゃない』と言ってもらって。そこから少しずつ『僕もホームランを狙えるんじゃないか』と思い始めて、その意識がここ2シーズンで結果に結びついてきたという感じです」
――バッティングを活かすためにも、もっと打席数を増やしたいですよね。交渉の場で「出場機会を増やしたい」という思いは相手に伝えたんですか。
「うーん、もちろん試合には出たいんですけど、実は、出場機会はそれほど意識していなくて。記者の方に『出場機会を求めてFAしたんですよね?』と聞かれて『それもありますね』と答えたので、『福田は出場機会を求めてFAした』と思われているかもしれませんが、ホークスでの起用法に不満はありませんでしたし、どこのチームに行ってもレギュラー争いはありますから。FA宣言した一番の理由は、純粋に他球団の評価を聞きたかったからでした」
――最終的な決断のポイントはどこになるんですか。
「僕の長所を活かしてくれるか、僕が大事にしてきた野球を続けられるか、というあたりになると思いますが、条件や環境も含めて総合的に考えたいですね」
同世代の柳田、秋山からの刺激。
――福田選手と同じ1988年度生まれの世代には名選手が多くいますが、ご自身と比べる対象の選手はいますか。
「います。柳田悠岐です。彼が入団してきたときに『化け物が入ってきたな』と思いましたから。その頃、僕は一軍の試合に出始めていたので、『柳田が頭角を現す前にレギュラーを取らないとヤバい』と焦っていました」
――ホークスでの13年間、福田選手は故障にも苦しんで、レギュラーを取れそうで取れない時期が続きました。同世代の台頭は悔しかったんじゃないですか。
「そうですね……秋山(翔吾)とも仲が良いのですが、柳田も含めて3人で食事に行ったことがあったんです。そのとき秋山と柳田は首位打者を争っていて、2人を見ながら『俺って何なんだろう』と思ってしまいました。あのときの悔しい気持ちは今も持っていますし、もっとバッティングを磨いて2人にはいつか追いつきたいですね」
――その柳田選手からは、FAについて何か言われましたか。
「『秀平、寂しくなるから残ってや』って言われました(笑)」
――一方、秋山選手は海外FA権を行使しましたが、動向は気になりますか。
「最初は秋山の動向が気になって仕方なくて、『どうするんや?』と探りを入れていました(笑)。彼はメジャーを目指していますが、もし方針転換して国内のどこかでプレーすることになったらポジションが被りますからね。でも、最近は自分の人生なので、彼のことは気にせず、自分にとって良い決断をしたいなと思うようになりました」
――決断の先には、何が待っていると思いますか。
「吹っ切れて、より野球に集中できるんじゃないですか。このオフは毎日、FAのことを考えて生活しているので……今も来年に向けた準備はしていますけど、プレーするチームが決まったら練習にも熱が入ると思いますし。決断したら、あとはとにかく野球をやるだけなので」