アラバのCBとデイビスのSB起用。

　もう1つのポジションには、両サイドのペナルティエリア間を走り回れるボックス・トゥ・ボックスタイプのゴレツカが入り、双方の穴を埋めていく。そしてミュラーはインサイドハーフとして守備の局面でも精力的に走りながら、攻撃では効果的なパスで2アシストを記録するなど、次々にチャンスを作り出した。

　コバチ前監督の取り組みすべてが悪かったわけではない。めぐりあわせやタイミングがかみ合わなかったものの、残していったものもある。

　それが、アラバのCBとデイビスのSB起用だ。アラバはグアルディオラ時代にもCBを務めたことがあるが、ドルトムント戦では抜群のポジショニング、競り合いの強さ、またビルドアップでは高精度のフィードを披露し、同僚キミッヒから「同ポジションにおいて世界最高クラスのプレー」と絶賛された。

　一方のデイビスは、スピードはあるが経験が不足しているという理由で、批判的な見方ばかりされていた。結果、何とかしなければの焦りが前に出てしまっていた。しかしこの試合では攻守ともに好タイミングのプレーを披露して、対面したサンチョ、ハキミに何もさせなかったばかりか、持ち味のスピードは極上のアクセントとなっていた。

レバンドフスキが語るフリック監督。

　全体の修正がうまくいき、さらに4－0という最終スコア以上に相手を圧倒しただけに、選手の表情も明るい。試合後のミックスゾーンでポーランド代表FWレバンドフスキは、フリックがどのようにチームにアプローチしたのかを次のように明かした。

「多くのことを分析してくれた。守備から攻撃までボールを持ったときの動き、ボールを持っていないときの動き。ポジショニングは正しかったのか、間違っていたのか。チーム全体についてだけでなく、選手個別の分析もあった。それがこの短期間でうまく修正する助けになったと思う」

　予想以上に輝かしいパフォーマンスを見せてくれたことで、代表取締役のルンメニゲもご満悦。ミックスゾーンで「しばらくハンジ・フリックでいく」と明言。後日、今年中はこの体制で戦うことを発表している。

【次ページ】　チアゴとコウチーニョはどうなる？