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セナと本田宗一郎に捧ぐブラジルGP。
歴史的1-2フィニッシュの舞台裏。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2019/11/19 11:50
優勝のフェルスタッペン(左)と2位のガスリー(右)。シーズン途中でトロロッソに「降格」したガスリーにとっても格別の表彰台だった。
「本田宗一郎さんの誕生日だから……」
この日はホンダにとって、もうひとつ負けられない理由があった。
それは11月17日がホンダの創業者である本田宗一郎の誕生日ということだ。ホンダF1でマネージングディレクターを務めている山本雅史は、レース前のレッドブル首脳陣とのミーティングでこう話したという。
「今日は本田宗一郎さんの誕生日だから勝ちにいきましょう」
それを聞いたヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)は「わかった」と言い、優勝を誓った。
山本は言う。
「この場所(F1)にいることはとても幸せなこと。なぜなら、F1はホンダにとってDNAとも言える最も重要なカテゴリーだから。ここにいると、ホンダが初めてF1に挑戦しに行った想いとか、宗一郎さんが何のためにF1を始めたのかということをひしひしと感じます。ホンダがF1で活躍することで、それを多くのホンダのスタッフに伝えていきたい」
本田宗一郎が唯一愛したドライバー。
セナは、ドライバーには興味を示さなかった本田宗一郎が唯ひとり愛したドライバーであり、セナも宗一郎を尊敬し、ホンダ・エンジンを敬愛していた。
セナが眠るブラジル・サンパウロで、本田宗一郎の誕生日に、ホンダが無様な戦いをするわけにはいかなかった。
そんな思いで臨んだブラジルGP。ホンダPUを搭載するレッドブルのマックス・フェルスタッペンが予選でポールポジションを獲得。決勝レースでも2位以下を寄せ付けない力強い走りで快勝し、見事期待に応えた。
4度チャンピオンに輝いたセバスチャン・ベッテルはその走りを見て「レッドブル・ホンダがあれほど速いのは見たことがなかったから、ちょっとした驚きだ。特に彼らは想定していた以上にストレートで速かった」とコメント。
今年6冠を達成したルイス・ハミルトンも「理由はわからないが、ホンダはものすごく速かった」と舌を巻いた。