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稲垣啓太、「0.166秒」の微笑み。
笑わない男とカメラマンの真剣勝負。 

text by

近藤篤

近藤篤Atsushi Kondo

PROFILE

photograph byAtsushi Kondo

posted2019/11/15 20:30

稲垣啓太、「0.166秒」の微笑み。	笑わない男とカメラマンの真剣勝負。<Number Web> photograph by Atsushi Kondo

首、肩、腕、脚、そして表情。日本を支えた稲垣啓太は、やっぱり大きかった。

6分の1秒だけ、ガッキーは微笑んだ。

 そうだ、ガッキーの笑顔の話だった。

 インタビューが終わると、ガッキーはタクシーに乗り込んだ。窓を開けて挨拶をしてくれる彼に、僕が「ニッポン!」とふざけて叫ぶと、ガッキーは車の中から「チャチャチャ」と返してくれる。基本的に彼はそういう人なのである。

 ガッキーが去った後、僕はドキドキしながら撮った写真をパソコンのモニターで再生し始める。僕の使うニコンD5は毎秒12枚の写真が撮れる設定になっている。

 あった! ガッキーがほんの少しだけ微笑んでいるカットは2枚だけあって、そのうちの1枚はピントがあっていなかった。

 6分の1秒、それがガッキーが微笑んだ時間の長さだった。0.166秒だけか、短い。

 その写真は、Number PLUSの表紙をめくった次のページに載っている。なんだか、とても頼りになりそうな男が、こちらに向かって優しく微笑みながら。こう言っているように見える。

「やればさ、できるんだよ」と。

 次ガッキーに会った時、あんな写真撮りやがってと胸ぐらを掴まれないといいのだけれど。

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