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上田瑠偉、「12秒差」の逆転劇。
スカイランニング世界王者の誕生。
text by
千葉弓子Yumiko Chiba
photograph bySho Fujimaki
posted2019/11/14 07:00
上田瑠偉(手前)は最後まで優勝を争ったオリオル・カルドナにも讃えられ、世界一になった。
駅伝の名門校からトレイルの世界へ。
上田瑠偉、26歳。いま日本の山岳ランニング界を先頭で牽引し、世界の強豪を相手に勝つことができる唯一のランナーと言ってもいいだろう。
2014年秋。上田は弱冠21歳にして、歴史ある日本の山岳レース『日本山岳耐久レース(ハセツネ71.5km)』で7時間01分13秒という大会新記録を打ち立てた。
翌年からは、主に標高差の大きな20~30kmのコースで繰り広げられる「スカイランニング」のレースで世界に挑戦し、アジア選手権とユース世界選手権で見事に優勝を果たす。それ以外でも、フランス・モンブランを舞台にした世界の強豪が集うレースCCC(約100km)で準優勝するなど、輝かしい戦績を収めてきた。
上田は、大迫傑らを輩出した駅伝の名門・佐久長聖高校を卒業後、早稲田大学へ進学。大学時代にトレイルランニングと出合い、そこに自らの進むべき道を見いだして、大学卒業2年後の2018年春からプロの道を歩んでいる。
アウトドアメーカーのコロンビアに所属しながら、『スカイランナーワールドシリーズ』での優勝を目指して、欧州を中心に世界を転戦してきた。
優勝すれば年間総合優勝。
スカイランナーワールドシリーズとは、2年に1度開催される『スカイランニング世界選手権』と並ぶスカイランニングの2大タイトルのひとつで、年間シリーズ16戦の獲得ポイントによってその年の王者が決まる。
2019年10月19日、上田はシリーズ最終戦となった『リモーネ・スカイマスターズ』に参戦し、前半5km地点からトップをひた走っていた。そのままゴールをすれば、このレースだけでなく年間総合優勝も文句なしに決まる。
だが、終盤でまさかの追い上げを受けていた。しかも、抜かれたスペイン人のオリオルは年間ポイントでも首位争いをする最大のライバルだったのだ。