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ラッキーライラックとスミヨン。
エリ女でメジロドーベル以来の快挙。 

text by

島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byYuji Takahashi

posted2019/11/11 12:10

ラッキーライラックとスミヨン。エリ女でメジロドーベル以来の快挙。<Number Web> photograph by Yuji Takahashi

ラッキーライラックの復活で、牝馬戦線は混迷の度合いを増した。ラヴズオンリーユーの復活も待たれる。

ラヴズオンリーユーは外を狙った。

 5馬身ほど離れた2番手につけていたラヴズオンリーユーが内に切れ込みながら差を詰めようとする。

「直線で内にモタれて、(スパートするのに)時間がかかった」とデムーロ。

 デムーロはラヴズオンリーユーを立て直し、外に持ち出して追い出した。

 それにより、ラヴズオンリーユーの後ろの内埒沿いから伸びてきたラッキーライラックの前方がクリアになった。スミヨンは、逃げるクロコスミアの内のスペースを狙った。

「4コーナーでは加速もついていたので外を回ることもできたのだが、ラスト200m地点で内が空いたので、そこを突いた。切れる脚があるので、突き抜けられる自信があった」

 内のラッキーライラックと外のラヴズオンリーユーが馬体を離して並走し、前のクロコスミアを追う。

 そこからラッキーライラックが鋭く伸びた。クロコスミアの内から差を詰め、並びかけたと思ったら、もうかわしていた。スミヨンの叱咤に応え、2着のクロコスミアを1馬身1/4突き放して先頭でフィニッシュ。なかなか勝てずに苦しんでいた2歳女王が見事に復活した。

メジロドーベル以来の快挙。

 2歳女王がエリザベス女王杯を制するのは、'98、'99年に連覇したメジロドーベル以来20年ぶり2頭目という偉業であった。

「ここまで長かった。やっと勝つことができて嬉しいです」と微笑んだ松永調教師は、レース前、スミヨンには何も指示を出さなかったという。

 スミヨンは、この馬の父オルフェーヴルに騎乗し、'12年と'13年の仏フォワ賞を連覇し、凱旋門賞でともに2着になっている。'12年の凱旋門賞は、後方から直線だけで前を一気にかわし、圧勝かと思われたところで差し返されての2着だった。

 そんな父の背中を知る名手が、娘に大きな勲章を取らせた。道中は、やや行きたがっていたのをガチッと抑え、直線で結局インを狙ったのは、前が壁になってもさばく自信があったからだろう。

【次ページ】 スミヨンは5年ぶりのGI勝利。

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ラッキーライラック
クリストフ・スミヨン

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