野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
“ZOZOマリン最強の売り子”なな。
これは、もう1つのペナントの物語。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byYuki Suenaga
posted2019/11/07 19:00
広いZOZOマリンを、樽を背負ってひとり歩く。それはもはや徳川家康「重荷を負うて遠き道を行くがごとし」の境地。
ハンデがなければ、1位は今井さやかだった。
ちなみにこの日のななの記録は、自己最多を再び大きく更新している。412。その3つの数を足すと、ナナになったのは、何の因果だろうか。新女王となったななやんに、敗れた女王・今井さやかが歩み寄る。
「おめでとう。がんばったわね」
ななの涙腺は崩壊寸前だった。ああ、なんて大きな人なのだろう。やはり私はこの人にはかなわない。年数ハンデのない、純粋な杯数の勝負ならば1位は今井さやかだった。敗れて言い訳をしない今井こそ本当の女王なのだろう。この戦いの後、今井は新女王のななをこのように評している。
「ななちゃんは可愛くて笑顔もキュート。ビール販売中は笑顔を絶やさず仕事に対する熱意のある、とってもいい子です。来年も切磋琢磨しながら一緒に頑張っていけたらいいなあと思っています」
さすが。さすがである。
ハワイ旅行よりフェニックスリーグ?
さて、ペナントレースの優勝賞品はハワイホノルル2泊3日の旅行。11月17日のファン感謝デーで贈呈される。ななはこのハワイ旅行を子供の頃にマリンへ連れてきてくれた両親をはじめ家族でいくことに決めているとか。
「ハワイも嬉しいんですけど、いまは宮崎のフェニックスリーグと来年の石垣キャンプに行くことの方が楽しみです。来年は……どうでしょうね。ただ、今年私が勝てたことは、さやかさんをはじめ、アサヒの先輩たちがすごくやさしくいろんなことを教えてくれたからです。だから今度は私が新しく入ってきた後輩たちにいろいろと教えてあげられるようになりたいですね」
誰もいない記者会見場。アスリート然と答えるななに、最後の質問をぶつけた。
——優勝を決めた最終戦。あなたがうったタマはなんですか?
「売ったものは日本一美味しいZOZOマリンのビール。届けたものは笑顔です」
千葉マリンは日本でも屈指のビールが美味しい野球場である。海風を浴びながら飲むビール。その泡の向こう側に映る新女王のなな、そして今井さやかやりか、近藤先生をはじめとする売り子たちは一体どんな戦いを見せてくれるのだろうか。
来年のZOZOマリン。売り子界のエースは。その前に売り子ペナントはやるのか。新エースをねらえ――2020に続く。
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