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井上尚弥の圧倒的優位は揺るがない。
では今、ドネアは何を狙っているか。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byToshiya Kondo
posted2019/11/05 20:00
9月に行われた公開練習では、井上尚弥はコンディションの良さそうな姿を見せていた。果たしてどんな戦いになるのだろうか。
大橋会長「カウンターが怖い」
26歳の井上に対し、ドネアは36歳。ドネアは来日後の公開練習で「20代と同じトレーニングをして、20代の時と同じパワーとスピードをキープしている」と豪語したが、フィジカル面で全盛期と同じとは考えにくい。
ただし、プロ20年、45戦40勝(26KO)5敗(井上は18戦全勝16KO)というキャリアは井上にとっても脅威だ。
ドネアの練習を視察した大橋秀行会長が「カウンターが怖い。カウンターのタイミングはキャリアを重ねれば重ねるほど身についていく」と話していたように、“フラッシュ”と評されるドネアのカウンターがモロに決まれば、モンスターといえども立っていることは不可能である。
井上と戦うためにドネアの策は。
そんなドネアと井上の試合はどのようなストーリーを描くのか。まず注目したいのは、ドネアがいかにしてスタートを切るのかである。
体格で上回り、スーパー・バンタム級、フェザー級でもファイトしてきたドネアがパワーを前面に押し出して勝利を手にしようとするなら「スタートから仕掛ける」という予想が成り立つ。
若くてスタミナのある井上を相手に試合を長引かせるよりは、自分が元気な前半、相手にパンチの軌道やタイミングを読まれないうちに勝負する。リスクはあるが、モンスターに本気で勝とうとするなら、それくらいの思い切りは必要だろう。
一方で豊富なキャリアとカウンターがドネアの武器であるのなら、序盤は慎重にしのいでチャンスを狙う、という選択肢も十分ありうる。
ラウンドを重ねたほうがカウンターのタイミングが読めるし、長いラウンドの経験が少ない井上は、終盤の底力が未知数という予測も成り立つ。
地元で迎える試合で、試合会場のさいたまスーパーアリーナは超満員。派手なKOを期待する周囲からのプレッシャーは相当なものだ。
経験豊富なドネアがそのあたりを頭に入れているのは間違いない。