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井上尚弥の圧倒的優位は揺るがない。
では今、ドネアは何を狙っているか。
posted2019/11/05 20:00
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Toshiya Kondo
11月7日、さいたまスーパーアリーナで行われるボクシングのワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)バンタム級決勝が目前に迫った。
決勝で激突するのはWBA・IBF世界同級王者の“モンスター”井上尚弥(大橋)とWBA同級“スーパー”王者の“フィリピーノ・フラッシュ”ノニト・ドネア(フィリピン)だ。
圧倒的な強さでトーナメントを勝ち上がった井上有利の予想が多いものの、世界を舞台に名勝負を演じてきた百戦錬磨のドネアを警戒する声も決して小さくない。注目度が日に日に高まっている“バンタム級最強決定戦”の行方を占ってみよう。
井上有利の根拠はここ数試合の圧倒的なパフォーマンスにほかならない。
バンタム級王座を獲得し、3階級制覇を達成した'18年5月のジェイミー・マクドネル(英)戦と、WBSS初戦のフアン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)戦をそれぞれ1ラウンド、WBSS準決勝のエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)戦を2ラウンドで終わらせているのだから、井上の苦戦を想像しろと言われても難しい。
ちなみにイギリスの大手ブックメーカー、ウィリアムヒルのつけたオッズは、井上の勝利が1.1倍、ドネアの勝利が6.5倍だから、世界も井上の勝利を“鉄板”と見ていることになる。
ドネアへの警戒を物語る練習風景。
しかし、ドネアの力量に冷静に目を向けると「今回こそはそう簡単にはいかない」という見方は十分な説得力を感じさせる。いずれも世界王者、ないし元世界王者だったマクドネル、パヤノ、ロドリゲスと比べても、ドネアは破壊的なパンチ力と、数々の修羅場をくぐってきたキャリアで他の3人を引き離しているのだ。
ドネアの実力を雄弁に物語っていたのが、井上のこれまでの練習風景だった。
ここ数カ月、井上はシャドーボクシングでも、マスボクシングでも、スパーリングでも常にスピードとフットワークを駆使して距離を保ち、ドネア必殺の左フック、左アッパーにそなえて右のガードをこれでもかと意識してきた。本来のスタイルではあるのだが、いつも以上に「まずはディフェンス」という高い意識を感じさせた。それほどドネアの一発を警戒していると言えるだろう。