第96回箱根駅伝(2020)BACK NUMBER
[平成ランナーズ playback vol.1]
渡辺康幸「ライバルの存在が生んだ“1時間6分台”の衝撃」
text by
折山淑美Toshimi Oriyama
photograph byNaoya Sanuki
posted2019/11/14 11:00
2010-2011年シーズンには早稲田大学監督として学生三大駅伝3冠も達成した。
それでも、ひとつだけ心残りがある。
渡辺自身は大学の4年間を、こう振り返る。
「僕の場合は巡り合わせが良かった。1学年下には小林雅幸という強い選手がいて、いい練習相手になってくれたし、入学した時は櫛部さんや花田さん、武井さんがいた。それに、ライバルとなるマヤカ君もいた。その中でもやっぱりマヤカ君は一番思い出深い選手です。彼がいたことによって自分も頑張れたというのはありますね」
一方で、当時を振り返ると、ひとつだけ心残りもあるのだという。
「実は彼とは箱根路で一度も肩を並べて走ったことがないんです。区間新記録を出した時も、彼はずいぶん先にいたから姿も見えなかった。できれば一度だけでも、肩を並べて勝負してみたかったな」
そんな思いは、マヤカも同じかもしれない。肩を並べないふたりの、心の中で互いを強く意識しあった戦いは、あの時、鮮やかな輝きを見せていた。