“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J2京都FW一美和成がゴール量産中。
宮本恒靖との1対1で学んだ駆け引き。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/11/02 11:30
新潟戦で敗れるも、一矢を報う強烈なシュートを決めた京都FW一美和成。今季16ゴールは、J2得点ランキングで日本人2位の数字だ。
甘えを断って移籍決断した一美。
2017年はJ3の舞台で戦うU-23で8ゴールを叩き出すと、2018年は3ゴール。7月に宮本監督がトップチームの監督に就任すると、8月10日のJ1第21節FC東京戦で念願のトップデビューをスタメンで飾った。ゴールこそなかったが、リーグ9試合出場とプロとしての足掛かりをつかんだシーズンとなった。
「2年目で点を取れるようになったことが大きな成長だと感じたし、3年目で手応えをつかむことができた。でも……」
迎えたプロ4年目の今季、彼は大きな決断を下した。
「トップで試合に絡めたのですが、最初の2試合をスタメンで出たあとは途中出場が続きました。トップチームを経験したことで、試合にたくさん出たいという気持ちが溢れてきたんです。ちょうどその時、サンガからオファーをもらいました」
もちろん簡単な決断ではなかった。G大阪には愛着と荒削りだった自分をFWとしてプロ仕様に仕立ててくれた恩義がある。
「恒さんからは『残って欲しい』と言われ、それは本当に嬉しかった。でも、どこかで『恒さんだから試合に出られるかもしれない』という思いが、自分の甘えに繋がってしまうのではないかという気持ちもあって……。イチから環境を変えて、自分の力でスタメンを勝ち取って試合に出続けるようになりたい気持ちが強くなりました。かなり迷いましたが、最後は恒さんも僕の気持ちを尊重してくれた。恒さんに『一美は成長した』と言ってもらえるように、サンガで絶対に結果を残したいと思って決断しました」
強引なシュートに加わった駆け引き。
心機一転で迎えた2019年。J2第8節栃木SC戦で京都での初スタメンを勝ち取ると、すぐさま2ゴールの活躍。そしてレギュラーに定着した第14節町田ゼルビア戦から第16節の東京ヴェルディ戦では、3試合連続ゴールをマークした。その後も、連続ゴールと記録するなど、瞬く間にブレイクした。
「サンガに来て一番の変化は、強引にシュートへ持っていけるようになったこと。覚悟を決めて来たはずなのに、シーズンの初めはベンチ外も経験して、スタメンから外されたこともあった。やっぱり僕はゴールという目に見える結果を出さないとスタメンに定着できない。これはガンバでも同じだったのですが、代わりはいくらでもいるという危機感を強烈に感じるようになった」
確かに今季の彼はボールを受けると素早く前を向き、遠いレンジからでもシュートを積極的に狙うようになった。
ただ、単純にゴールへの意欲が増したからといって、得点を量産できるというものではない。もともと強烈なパンチ力は持ち味で、高校時代から強引にシュートを狙う積極性が彼の売りであった。だが、今は技術、駆け引きを兼ね備えていた。
「あまり積極性や強引さを前面に出してしまうと、空回りをしてしまう危険性がある。なので、なんでも自分でこじ開けるというより、まずシュートとパスのどれが有効な局面かを考えて、パスが最善ならパスを選ぶ。それでボールを収めてからターンがスムーズになったし、顔が上がるようになった。一度預けて動き直すことも学んだし、ノリさんによって磨かれた技術と、恒さんと智さんで磨いた1対1が本当に生きていると実感しています」