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右肘手術、戦力外でも消えない笑顔。
オリックス黒木優太、また育成から。 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byNoriko Yonemushi

posted2019/10/31 10:00

右肘手術、戦力外でも消えない笑顔。オリックス黒木優太、また育成から。<Number Web> photograph by Noriko Yonemushi

今年6月にトミー・ジョン手術を受けた黒木優太。「違和感はまったくない」とリハビリは順調に進んでいる。

同期入団は山本由伸、山岡泰輔。

 今年、最優秀防御率のタイトルを獲得した山本由伸や、最高勝率の山岡泰輔は同期入団だ。2人はプレミア12に臨む侍ジャパンのメンバーにも選ばれた。焦りがないわけはない。しかし、そうした感情をコントロールする術を、黒木はこの4カ月の間に習得した。

 手術して間もない頃は、野球を見たくなかったと振り返る。

「人が投げているのを見たくなかった。見ると、居ても立ってもいられなくなるんですよ。焦ってしまいそうだったし。でもだんだんと、そういう気持ちを抑えて、しっかり治そうと思えるようになった。メンタルは少しばかり強くなったと思います。大人になりました(笑)。多少何かあっても、こんなふうに1年間投げられないほど苦しいことってないでしょ、と思えます」

 手術から2カ月ほど経つと、今度は逆に、様々な投手の映像を見るようになった。

「見たくなかった期間も、改めて見るようになった期間も、どっちも大切だったのかなと思う。いろいろなものが見えてきたので、悪くはなかったかなと思います。

 トミー・ジョン(手術)をやって、めちゃくちゃ自分を見つめ直す時間ができたんですよ。一度離れてみると、自分を客観視できて、自分に足りなかったこととか、逆に、これいらなかったんじゃないのかな、というものが見えてきた。それはすごくよかったと思いますし、気づいたことを具現化できるように、しっかり治してやらないとな、という感じです」

 いらなかったんじゃないかと思うもの。それは「スライダー」だと言う。黒木にとっては、ストレートの次に投げる割合の多かった球種である。

「もう、スライダーいらんなと思って」

「たぶんトミー・ジョン手術をする人のほとんどがスライダーを投げていると思う。僕はもう、スライダーいらんなと思って。手術して、今、もう一度フラットな状態になったわけじゃないですか。でも何かを変えないと、また同じことになる。だから、スライダーの代わりになるものを何か見つけないといけないなと思っています。スライダーは、まったく投げないわけではないけど、完璧に減らします」

 スライダーの代わりになるものについては、「イメージはありますけど、まだ言わないですよ。言ったら面白くないじゃないですか」と笑ってかわした。

 様々な投手の映像を見る中で、特に興味を引かれたのが、昨年メジャーリーグでサイ・ヤング賞を獲得したメッツのジェイコブ・デグロムで、そのデグロムからヒントを得ているようだ。

 今後はまずマウンドに復帰し、育成契約から支配下にはい上がることを目指す。

「前向きしかないでしょ。後ろ向きになる必要がない」と黒木は笑い飛ばす。

【次ページ】 甲子園に届かず、東都2部で成長。

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