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万全のアーモンドアイ、やはり無敵。
調教師も騎手も驚いた圧倒的な脚。
posted2019/10/28 11:50
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Kyodo News
かつて、秋の盾をこれほど圧倒的な強さで勝ち取った馬がいただろうか。
令和最初の天皇賞となった第160回天皇賞・秋(10月27日、東京芝2000m、3歳以上GI)を、クリストフ・ルメールが騎乗するアーモンドアイ(牝4歳、父ロードカナロア、美浦・国枝栄厩舎)が直線で鋭く抜け出し、3馬身差で優勝。
勝ちタイムは、レコードにコンマ1秒及ばぬ1分56秒2。牝馬としては、2010年のブエナビスタ以来の勝利となった。
「びっくりしました。これだけのメンバーなので、鎬を削っていく感じになるのかと思っていたら、一気に抜けた。おっかないな、すごいな、と思いました」
レース後の国枝栄調教師のこの言葉が、アーモンドアイの恐ろしいほどの強さを何よりもよく現している。
アーモンドアイには十分な「隙間」。
2番枠から速いスタートを切り、好位の内で先行した。が、1000m通過59秒0というゆったりした流れのなか、前には最大の強敵と目されていたサートゥルナーリア、すぐ外には3番人気のダノンプレミアム、直後にはスワーヴリチャードがおり、強固な「アーモンドアイ包囲網」が形成されていた。
直線では前が壁になり、行き場がないように見えたが、ルメールは冷静だった。ラスト400mを過ぎたところで、逃げていたアエロリットの内にあった馬1頭半ほどの隙間に、迷わずアーモンドアイを誘導した。
「スペースがあれば、すぐに入ろうと思っていました。内に十分なスペースがあったので、そこに行った。アーモンドアイはすごくいい反応を示してくれた。ボタンを押したら、すぐに速い脚を使った。ぼくも彼女の上でびっくりしました」
実際には狭いスペースだったのだが、アーモンドアイがそこをすり抜ける時間がほんのわずかだったので、ルメールには「十分」と感じられたのだろう。
「包囲網」から抜け出したアーモンドアイは、見る見る後ろとの差をひろげていく。ゴール前ではルメールが何度も後ろを振り返り、最後の5完歩ほどは、ガッツポーズをしながらゴールを駆け抜けた。