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通過した。超えた。応援した。現れた。
敗れても消えぬ最高のラグビーW杯。
posted2019/10/25 11:50
text by
金子達仁Tatsuhito Kaneko
photograph by
Naoya Sanuki
100点満点で1000点をあげてもいい。
それが、南アフリカ戦が始まる直前の偽らざる気持ちだった。それくらいのことを日本はやった。
同じスタジアムでロシアとの開幕戦が行なわれた時、わたしには1カ月後の日本がまったく想像できていなかった。こうなってくれていたらいいな、これぐらいになったら成功といえるかな──といった願望はあったが、反面、どうせ無理だろうという諦めもあった。
日本がアイルランドとスコットランドを倒して1位でグループを通過する?
テレビの瞬間最高視聴率が50%を超える?
アイルランド人が、ニュージーランド人が、ジャパンのユニフォームを着て南アフリカと戦う日本を応援する?
この大会を「史上最高のワールドカップ」と言い出す人が現れる?
通過した。超えた。応援した。現れた。どれか1つ現実になっただけでもとんでもないことなのに、どんな楽観主義者でも思い描けないような未来図が、現実のものとなって2019年10月20日の日本にはあった。
この1カ月間の日本で起きたこと。
知っている人がいたら教えていただきたい。
洋の東西を問わず、それまで不人気だったスポーツが、わずか1カ月の間に国民的関心事になった例はあるだろうか。
ヨーロッパや南米で、サッカーの人気を圧倒するようなスポーツが突如として出現したことはあっただろうか。
北米大陸で4大スポーツを飛び越えたスポーツはあっただろうか。
この1カ月間の日本で起きたことは、だから、世界的に見ても、歴史的に見ても極めて珍しいケースだとわたしは思う。
おそらくは日本でしか起こり得ないこと、だとも。
「サッカー不毛の地」と呼ばれたアジアの中でも飛びっきりの僻地だった島国にサッカーの花を咲かせた日本は、同じような、いや、それ以上の奇跡を起こして見せた。
昨日までの常識は、今日の非常識になった。
明治維新って、こんな感じだったのかもしれない──。