最後の勝利がサモア戦だったら……。

　もしスコットランド戦が中止になっていれば──日本人にとって、最後の勝利の記憶はサモア戦になっていた。

　あれも素晴らしい試合だった。終了直前に自陣深くでのスクラムを選択したサモアの勇気、そしてボーナスポイントをもたらすことになった松島幸太朗のトライ。陸上トラックのない豊田スタジアムの熱狂は、いまもまざまざと思い出すことができる。

　だが、あの試合の瞬間最高視聴率は、50％には届かなかった。

　サモアは、ティア1のチームではなかった。

　そんな試合が、日本にとって、日本人にとって、そして今大会にとってホストカントリーがあげた最後の勝利となっていたら──。

　南アフリカ戦の完敗で、すべては叩き潰されていた。いや、そもそも、あれほどの高揚感、多幸感がわたしを、日本中を包んでいたかどうか。

　まだワールドカップは続いている。世界の目は、依然として日本に向けられている。

　それでも、この先何が起ころうとも、どんな結果に終わろうとも、この大会に対する世界の評価は、もう変わらないだろう。

　世界から集まったラグビーを愛する人々と、日本人が、それを作り上げたのだ。