“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
山形でともに喜び、泣いた12年。
山田拓巳が願う「J1と新スタジアム」。
posted2019/10/12 09:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
3つの目標がモンテディオ山形の山田拓巳を突き動かしている。
現在、プレーオフ圏内の4位につける山形は、自動昇格圏の2位に位置する大宮アルディージャを勝ち点差2で追いかけている。そのチームでキャプテンを務める山田は、J2第35節ジェフユナイテッド千葉戦でも決勝弾を頭で叩き込み、4-1の快勝に大きく貢献した。
山田は今季、3-4-2-1の左ウィングバックとしてレギュラーの座を掴み、開幕からリーグ戦全試合出場。先発から外れることもあったが、第27節のアルビレックス新潟戦以降は試合連続スタメンと、攻守にわたって重宝されている。
決勝弾となったシーンは、自陣右サイドの相手スローインから始まった。
左サイドにいた山田は相手のクロスボールを警戒して、いつでも自陣ゴール前に戻れるように、ペナルティーエリア近くにポジションを取っていた。だが、千葉CB増嶋竜也へ出たバックパスに対してFWジェフェルソン・バイアーノがプレスを仕掛けることを確認すると、山田は重心を前に置いた。
「バイアーノと相手DFとイーブンのボールだったので、前に出ようとしつつも、万が一相手ボールになっても戻れるように体の向きを作りました。そうしたらバイアーノにうまく収まってくれたので、それを見て動き出しました」
こぼれ球を逃さなかったキャプテン。
バイアーノが増嶋より一瞬早くボールに触れて入れ替わり、右サイドでフリーになると、山田は猛然と左サイドをスプリント。バイアーノが中央へ斜めにドリブルを仕掛けると、並走していたFW山岸祐也と2人でスルーパスを受けられるポジションに到達した。
「ギシ(山岸)には『スルー! スルー!』と伝えていたんですけど、ギシがシュートを選択したので、すぐにこぼれ球を狙うように切り替えました」
バイアーノのスルーパスを受けた山岸が放ったシュートは千葉GK佐藤優也にセーブされたが、その弾いたボールに飛び込んだのは最後までスピードを落とさなかった山田だった。
「もしギシがあそこでスルーをして自分のところにボールが来ていたら、ああなっていたかはわからない。こぼれを詰めるという自分らしさが出たのかな(笑)。あの形の方が僕はプレッシャーなく決めることができると思っています」