話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
ヴィッセル唯一の27試合フル出場。
山口蛍が献身の陰に持つ「野望」。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byGetty Images
posted2019/10/02 11:40
ヴィッセルのバランサーとして機能する山口蛍。加入した酒井高徳も、彼にとっては心強い同僚になりそうだ。
つなぐサッカーへの志向は変わらない。
ただ、山口自身は、この日の川崎戦の内容にやや不満気だった。
「今日も2−0から2−1になっているし、天皇杯(川崎戦)も3−0から3−2になった。松本戦(ロスタイムに失点し、2−1)もそうですけど、最後あういう終わり方をしているので、そこはゼロで終わる試合にしないといけない」
攻撃についても、これだけの選手がいるのだからという前提で要求している。
「後ろが3枚になって、攻撃の際の人数が少ないという印象はあります。今日のようにカウンターが決まればいいけど、できれば後ろからつないでボールを保持しながらゴールに迫っていくという展開を増やしていくのがいい。天皇杯での川崎戦ではそれが出来ている部分もあったんで」
要求が出てくるのも、勝てるようになってきたからだ。
イニエスタの左が主攻ではあるが。
システム変更の影響でチームの動きが良くなった中、山口自身のプレーにもアグレッシブさが戻ってきた。3バックになった大分戦の次の浦和戦で今季初ゴールを決め、つづく鳥栖戦では2ゴールを挙げた。
それまではパートナーがイニエスタだったり、ポジションがアンカーのために攻撃面での良さを発揮することがなかなか難しかった。今もボールはほぼ左のイニエスタを経由しているので「右にボールがくるのはなかなか難しい」と山口は苦笑する。
ただ、そういう中でもゴールを狙うようになったし、ボールを持った時は展開のパスだけではなく、同サイドにいる古橋に鋭い縦パスを入れるなど勝負のパスが見られるようになった。
「高いポジションを取っているので、受けてから縦パスを出せるし、もっとDF間でボールを受けていいパスを出せたらと思います。シュートは狙いたいし、その意識もある。ただ、うちはみんな前を向いたら1人で行って完結してしまうことが多い。コンビネーションでもいけたらよりいいかなって思うけど、そこに合わせていくのはちょっと難しいですね」
イニエスタが攻撃面を優先しているので、山口はその背後や横のスペースを気にしながらプレーしている。守備になるとアンカーのサンペールの横におりてきてダブルボランチのような形で守っている。そうした気の利いた守備は山口の良さでもあるが、今のポジションに100%満足しているわけではない。