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サッカー好きに贈るラグビー講座。
大きく違うオフサイドの概念とは。
text by
川端康生Yasuo Kawabata
photograph byNaoya Sanuki
posted2019/10/01 12:00
同じ「フットボール」であるラグビーとサッカー。ただしオフサイドの概念については大きく違う。
サッカーとのオフサイドの違いは?
……と書いてきたが、もしかしたら「ラグビーがよくわからないサッカーファン」の読者もいるかもしれない(僕の周りにも結構いる)。最後にそんな人向けに僕がいつもする説明を。
細かいルールはさておき、両者の違いは「手が使える」とか、「前にパスができない」とかではなく、「オフサイド」だと考えるのがいい。
ご存じの通り、サッカーではオフサイドラインは「人」によって規定される。守備側の後ろから2人目の選手である。少し乱暴な言い方をすれば、サッカーのオフサイドラインはそれぞれのチームの後方に1本ずつあり、その「2本」の間がオンサイドのエリアということになる。
これがラグビーでは「1本」なのだ。そして、それはボールの位置なのである。つまりボールより前にいる選手はオフサイド。
だからラグビーでは両チームの選手はボールをはさんできれいに分かれる。サッカーのように入り混じることもなければ、ボールより前にいる選手にパスすることも(オフサイドだから当然)できないのである。
パスできないどころか、オフサイドだから(やっぱり当然)プレーに参加することもできない。だからブレイクダウン(あの“ごちゃごちゃ”となっているとき)でも、ボールより前にいる選手はおとなしくしているか、速やかにどかなければならない。
そして再びプレーするためには自陣側(オンサイドの位置)に戻らなければならないというわけだ。
臆病なプレーをすればバレてしまう。
いかがだろう。僕はボールゲームの肝はオフサイドルールにあると考えているので、もしもサッカーを理解している人なら、この説明でラグビーも理解できると思う。それも本質的な理解につながると思う。
本質とはたとえばこんなことだ。
ボールの位置がオフサイドラインということは、ラグビーではボールホルダー(ボールを持っている人)が必然的に先頭になるのだ。彼より前に味方はいないのである。そして彼が前に進まなければ、チームは前に出られないのだ。
だから目の前に屈強な敵がいようとも逃げることはできない。ランニングプレーはもちろん、タックルされても、わずかでも前へ。その後ろに味方が続くのである。
言い換えれば、ボールを持った選手はチームメイトから常に背中を見られているということでもある。臆病なプレーをすれば、すぐにバレてしまう。
ラグビーを“勇気と責任のスポーツ”と称する所以である。