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WBA世界王者に挑む34歳の久田哲也。
「一本歯下駄」特訓と娘への思い。
posted2019/09/29 20:00
text by
芹澤健介Kensuke Serizawa
photograph by
Kensuke Serizawa
10月1日に行われる「WBA世界ライトフライ級タイトルマッチ」に要注目だ。理由は、日本人同士の世界タイトル戦、というだけではない。
スーパーチャンピオンとして2度目の防衛を狙う京口紘人(ワタナベ)と、挑戦者で同級1位の久田哲也(ハラダ)があまりにも好対照なのだ。近い距離での打ち合いを得意とするスタイルこそよく似ているが、ボクサーとして歩んできた道程がまったく違うのである。
大阪のハラダジムで挑戦者・久田に話を聞いた。
エリート街道を無敗で進む王者。
トレーナーが構えるミットに、久田がテンポよくジャブと左フックを打ち込んでいく。本来は左利きの久田だが、サウスポースタイルではなく、右構えのオーソドックススタイルをとっている。つまり、ジャブや左フックが利き腕から放たれることになる。
久田がパンチを打つたびに軽量級とは思えない重い音がジムに響く。
「ウサギとカメみたいな話ですけど、ホントにここまで長かったです」
額の汗を拭いながら久田が言う。当然、ウサギとカメは、王者と自分のことだ。ウサギとカメ以外にも、早咲きと遅咲き、エリートと苦労人……、対照的な捉え方をされる。
王者・京口は現在25歳。小学6年からボクシングを習いはじめ、大阪帝拳で辰吉丈一郎に直々に教えを乞いながら、アマチュアボクサーとして技を磨いた。
大学卒業後にプロデビューして8戦目、わずか1年3カ月という日本最速の記録でIBF世界ミニマム級の王座を獲得すると、すぐに2度の防衛に成功。その後、ひとつ階級を上げてWBA世界ライトフライ級のベルトも奪い、あっという間に2階級制覇を成し遂げた。プロでの戦績は13戦全勝(9KO)。まばゆいばかりのエリート街道を無敗で突き進む若きチャンピオンである。