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WBA世界王者に挑む34歳の久田哲也。
「一本歯下駄」特訓と娘への思い。
text by
芹澤健介Kensuke Serizawa
photograph byKensuke Serizawa
posted2019/09/29 20:00
左利きだが、右構えのオーソドックススタイルで戦う久田。
2人は互いのSNSもフォローする仲。
この夏は、合宿先のフィリピン・マニラ市内で王者と挑戦者が邂逅するという珍事があった。偶然にホテルのフロアまで同じだったそうだが、聞けば2人は互いのSNSもフォローする仲だという。
「仲良しというわけじゃないんですけど。いいボクサーだと思うし、偉大な王者としてリスペクトしてます」
それは京口にしても同じようで、「プロで46戦はすごい。久田さんはいい人だし、尊敬もしている」と公言している。
最後は得意の左フックで。
そんな2人は、過去に一度スパーリングで対戦している。
「2017年の12月です。京口選手がミニマム級で初防衛する直前で、3Rだけ相手をしてもらったんです」
久田にはそのときの感覚がまだ残っているという。
「当時は彼が1階級下だったんですが、『ガードがしっかりしているな』という印象です。彼のアッパーとこっちの左フックが何度も交錯したのを覚えています」
今度の試合も至近距離での打ち合いになるだろう。互いに数階級上のパンチ力と言われる相手の攻撃をどれだけかわして、どれだけ耐えられるかが勝負のカギになる。
下馬評ではチャンピオン有利。だが、チャレンジャーはそうした雑音を気にする様子もなく「楽しみです」と言ってのける。
「1Rから打ち合いという展開も面白い。だけど、気負いすぎて空回りしないように、冷静に。経験を生かしつつ、チャレンジャーとして思いっきり勝負したい。そして、最後は左フックで決めます」
10月1日、老獪な挑戦者が、高校時代から夢見ていた世界戦のリングに上がる。