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バターのように滑らかだった。
“無冠の帝王”ナポレスの死を悼む。
~国を捨てた名ボクサーの人生~
posted2019/09/27 07:00
text by
前田衷Makoto Maeda
photograph by
AFLO
三迫仁志、勝又行雄と昭和の名選手が相次いで逝った今夏、メキシコから届いた訃報には感慨深いものがあった。ウェルター級で2度世界王座につき「パウンド・フォー・パウンド最強」と呼ばれたホセ“モンテキーヤ”ナポレスが8月16日、病気のため79歳で旅立った。
強打と技巧を駆使した万能型ボクサーはあまりに強すぎてチャンピオンたちから対戦を忌避され、長らく「無冠の帝王」と呼ばれた。世界王者が100人近くいる今では死語に近いが、当時「無冠の帝王」として世界中からリスペクトされたのがナポレスだった。
キューバ出身。'59年のカストロ政権樹立後プロボクシングが禁止されたため、多くのボクサーが祖国を捨てた。ナポレスもその1人で、妻子を祖国に残しメキシコを拠点に現役生活を続けた。プロ11年目の'69年、初挑戦でカーチス・コークスを攻略し王座に就いたのはピークを過ぎた29歳。'74年に2階級上のミドル級王者カルロス・モンソンに挑んで敗れたが、全盛期なら別の結果もあり得たろう。