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新しい地図・香取慎吾×パラバドミントン。
「こんなに速く動ける世界がある」
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/09/30 08:00
豊田まみ子(左)と小倉理恵が打ち込むパラバドミントンの世界に、香取慎吾は驚きの連続だった。
駆け引きがメインで、面白さ。
香取 障がいの箇所が違うと、動き方が違ってくる気がします。
豊田 そうですね。ダブルスでは、広い範囲を素早く動ける上肢障がいの選手が後衛に回り、下肢障がいの選手が前衛でプレーすることが多いです。ミックスの場合は、男性が下肢障がいで女性が上肢障がいの組もあります。相手によって特徴が違いますし、男女のパワーの違いという要素も加わるので、さらに複雑になります。
香取 戦略も難しそうです。パラスポーツって初めて観る競技が多いですが、バドミントンは誰でも子供のころに触れたことがあるから、他の競技よりも、お客さんがとっつきやすいと思います。ルールも健常者と同じですよね。
小倉 まみちゃんのSU5クラスは健常者と同じで、展開が早いので、見ていて純粋に楽しいです。私の車いすのクラスも基本的にルールは同じですが、コートが半面になるので、戦い方が変わってきます。前後の揺さぶり、駆け引きがメインで、そこが面白さでもあります。
香取 車いすバドミントン、体験させてもらいました。とんでもないですね。シャトルが落ちる位置が頭でなんとなくわかっても、急いで車輪を漕いで車いすを動かそうとした時には、もうポトンとコートに落ちている。身体の使い方が凄くて、この難しさは見ているだけではわからない。全然できないですもん。なんというか、悔しい!
小倉 ははは。私も車いすバドミントンを始めた時は、慣れるまでに時間がかかりました。特に車輪を逆回転させて後ろに下がるのが独特ですね。他競技は基本的に前進しかないですから。あと、車いすテニスはツーバウンドまでOKですけど、バドミントンは浮いているうちに打点に入らなきゃいけないので、より素早いチェアワークが求められます。
読みが当たった時は「よし!」
香取 先の展開を読むのも、大事になってくるんじゃないですか?
小倉 私はそこが課題で。だから相手の体勢や位置を見ながら、読みがピッタリ当たった時は「よし!」って思います。でも読みの逆を突かれることも多くて、つねに脳をフル回転することを意識して、練習するようにしています。
香取 豊田さんは左前腕がないことで、身体のバランスを保つために、何か工夫しているんですか。ずっとその状態で生活されてきて、それはそれでバランスが取れている気がするんですけど。
豊田 深い!(笑)。実はそこが意見の分かれるところでもあって。筋力をつけることで元々とれているバランスが崩れる、という見方もあります。私もずっと身体のバランスを意識していませんでした。でもコーチからは、左前腕がない分、健常者に比べると軸がブレやすいと言われます。
ずっと右腕だけで生きてきたからか、重心が右寄りで、左脚にあまり力が伝わっていなかったみたいなんです。成長するには筋力トレーニングが必要だと、今は感じています。特に立位の場合は脚力が大事なので、下半身を重点的に。あとはラケットを持たない左腕をもっとプレーに活かしたいので、肩甲骨まわりですね。肘から先がないので、上腕には筋肉がつきづらいんです。