猛牛のささやきBACK NUMBER
父が心配した守備で見せた「確実性」。
ドラ1太田椋の強さとしなやかさ。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2019/09/19 11:40
天理高校からドラフト1位でオリックスに入団。9月14日の楽天戦で8番・遊撃手でスタメン出場し、一軍デビューを果たした。
息子の一軍デビューに「ドキドキ」
その後は二軍で、主に1番または3番・遊撃手で試合に出続け.267の打率を残し、本塁打も5本放った。そしてチームが9連敗と苦しんでいた9月、一軍に呼ばれた。
息子の一軍デビューの日、暁さんは一日中緊張しっぱなしだったと言う。「ドキドキで、心臓が止まるかな、というほどでした」と、試合はバックネット裏から見守った。
打席よりも、守備の時間のほうが心臓に悪かった。
「バッティングのほうは、そう簡単に打てるもんじゃないとわかっているので。でも守備のほうは、ミスしてしまったら……というのがあって」
しかし太田本人は、初打席は緊張したが、守備では浮き足立つことはなかったと振り返った。
太田はショートの守備に自信とこだわりを持っている。入団会見の時から、アピールポイントを聞かれて、「守備の確実性」と答えていた。
動きにムダがなく、肩も強い。
その確実性の土台は、高校時代の冬場の練習にある。
その1つが、太田たちが「たまコロ」と呼んでいた練習だ。地面にボールを転がし、それを低い姿勢でひたすら捕球する練習を、毎日1時間行った。
太田を担当した谷口悦司スカウトは、同学年の遊撃手、根尾昂(中日)や小園海斗(広島)と比較して、こう語っていた。
「181cmという体格は魅力。大型のショートはなかなか出てこないので。3人の中では一番大きくて、それでいて動きがしなやかで、捕ってからの動きにムダがなく、肩も強い。アウトにできる打球を確実にアウトにする選手」
谷口スカウトは、「派手さはないけれど」と話していたが、9月14日からの東北楽天との3連戦で先発出場した太田が見せたショートの守備は、見る者を惹きつけるものがあった。
三遊間を抜けそうな打球を、深い位置で逆シングルで捕球すると、両足で踏ん張って、ノーステップで一塁へロングスロー。センター前に抜けそうな打球に追いつくと、今度は流れのままサイドスローですばやく送球。強さとしなやかさを見せつけた。
右腕を骨折してからのリハビリ期間に行ったトレーニングにより、下半身により粘りが出たと太田は言う。